159:すくむ ページ10
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「どうしてここにいるの」
『それは…』
「ソクジンとデート?」
『……』
「どうしてAがあんな事言うんだよ」
だって…そんなのホソク先輩が好きだからだよ。
新しい許嫁じゃなくて、私がホソク先輩と一緒に居たいって我がままなんだよ。
そう言えたら良いのに、今の私が何を言っても嘘っぽくなってしまうの、やだ…
何て言ったら良い?
ホソク先輩だけが大好きなの…泣きそうなくらい。
上手く答えられない私の方を振り返る。
頭から足先まで、何かを見定めるように動く視線。
初めての感覚に、すくむ。
パッと上げられた顔は、表面、穏やかに見えた。
「今日のAは綺麗だね」
なのにその言葉に宿る響きが、あまりに冷たくて身体の前で手を握りしめる。
怖い…
冴えたナイフのような空気をまとったまま、少しずつ距離が詰まっていく。
今入ってきたばかりのドアの方へ、一歩、また一歩と後ずさる。
知らない。
私の知らない、ホソク先輩…
どうしたらいいの?
どうしたら私は、私の本当の気持ちをホソク先輩に伝えられる?
何か言わないとって思うのに尻込みしてしまって、ほとんど無意識に後ろのドアノブを掴んで開けようとした。
「μ」
後ろから抱きしめるようにお腹に手が回って、もう片方は私の目の前の扉を押さえつける。
開きかけたドアがカチャ…と再び閉まった。
その体制のまま耳たぶに唇が押し当てられて、ひんやりとした耳に熱い温度が移されていく。
「μならまだ、俺のものだね?」
ん…
違うよ……
私の心全部、ホソク先輩のものだよ。
でもμの言葉なら、信じてもらえる…?
『Мくん…』
私の身体を引き寄せる腕を、きゅっと掴んだ。
想像以上に温度を失った手だった。
『まだ相手の人、決めないで』
ちゃんとホソク先輩の卒業までに、頑張るから。
恥ずかしくない私になるから…!
『あのね、ずっと』
Мくんだけだよって続けたかったのに、ジジっと実感を伴った音に止められる。
『え…』
「他の男の為に可愛くした姿なんて見ていたくない」
『まって、あ…』
うそ…
冷たい空気に背中が晒される。
ワンピースの後ろのファスナーが下げられて、腰元で止まった。
恥ずかしくて、訳わかんなくなって、ホソク先輩の腕の中で少し抵抗したら、背骨の窪みをそっとなぞられた。
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あさなさな(プロフ) - りつうさん» どっちも最高学年で生徒会の上の立場なので、嫉妬のような感情や一面は理性で隠してたんだと思います。ナムジュンさんの想いも、明かしていけたら…! (4月8日 13時) (レス) id: 4d4d65fc30 (このIDを非表示/違反報告)
りつう(プロフ) - 嫉妬によりMくんとナムさんの見えてなかった一面が顔を出しましたね〜!ナムさんもホソク先輩のことで葛藤したり懊悩してたのかな〜と想像してしまいました😢 (4月7日 16時) (レス) @page13 id: 2c4192e77a (このIDを非表示/違反報告)
あさなさな(プロフ) - Suzyさん» ありがとうございます…♡ (4月7日 10時) (レス) id: 4d4d65fc30 (このIDを非表示/違反報告)
Suzy(プロフ) - あさなさなさんの···繊細な表現がすきです💙❤💙 (4月5日 23時) (レス) id: 8ccc3081cc (このIDを非表示/違反報告)
あさなさな(プロフ) - りつうさん» 主人公の相談に乗ってくれる人がなかなか居なかったので、ようやくのヨンジュン先輩でした!それぞれのキャラクターの心情まで深く読んでいただけて嬉しいです!素敵なお言葉もありがとうございます! (3月18日 12時) (レス) id: 4d4d65fc30 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:あさなさな | 作成日時:2024年3月15日 18時