158:縁談 ページ9
.
また「ありがとうございます」とお辞儀をしていたら、「そんなかしこまらなくて良いのに」と楽しそうに目を細める。
その表情がホソク先輩にそっくりだった。
「そうだ、ここにはホソクとナムジュンも来てるんだよ。今日は会えないと思うけど、いつも助けてくれてありがとうね」
「いつも助けてもらっているのは僕たちです」
『はい。先輩方に教えてもらう事ばかりで…』
「ははっそうか。来年、再来年と楽しみだよ」
とんでもないプレッシャーのお言葉をいただいて、二人でニコニコペコペコを繰り返していたら、不意に理事長の意識が私たちの後ろに向いた。
「会場に戻りなさい」
唐突な命令口調に後ろを確認したら、そこにホソク先輩がいた。
大きく目を見開いて「2人ともどうして…」と零す。
隣にはナムジュン先輩もいて、僅かだけど目を見張っているように見える。
「何しに外に出たんだ」
「別にトイレくらい良いじゃないですか」
「もう何度目だ、頻繁に席を外して。口実なのが透けて見える。
ご令嬢方に失礼だ」
ご令嬢…
もしかして、このパーティーって…
さっきまでとは別人みたいな理事長の温度のない声が、真っ直ぐホソク先輩に向かう。
「別の許嫁を望んだのは、お前じゃないか」
ホソク先輩と目が合った。
誰も何も発さない息の詰まる時間が流れる。
ぎゅっと目を瞑って、理事長の方を思い切って振り返る。
『あの、ホソク先輩は自由に恋愛をしちゃ、いけないんですか?』
「すまないけど、口を出さないでもらえるかな」
『すみません。でも、でも……
高校生で決めてしまうなんてあんまりです…』
私、何を言ってしまってるんだ。
こんな事言っていい立場でもないのに。
むしろ私は蚊帳の外で、ホソク先輩を裏切るような事までしてしまっているのに。
「大学で変な女に引っ掛かったらどうするんだ。大事な跡取りに由緒正しい女性との縁談を持ってくるのも、私の仕事だ」
『それは…ホソク先輩の事を全く信じていないって言ってるのと、』
「A」
『あ、え…』
左手をクンと引っ張られる。
私の身体も、走り出していた。
「ホソガッ」
後ろでホソク先輩のお父さんの声がする。
けれど、それを無視したまま私を引っ張るホソク先輩の、後ろ姿についていく。
そして控室のような一室に入ると、パッと手を離した。
.
187人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
あさなさな(プロフ) - りつうさん» どっちも最高学年で生徒会の上の立場なので、嫉妬のような感情や一面は理性で隠してたんだと思います。ナムジュンさんの想いも、明かしていけたら…! (4月8日 13時) (レス) id: 4d4d65fc30 (このIDを非表示/違反報告)
りつう(プロフ) - 嫉妬によりMくんとナムさんの見えてなかった一面が顔を出しましたね〜!ナムさんもホソク先輩のことで葛藤したり懊悩してたのかな〜と想像してしまいました😢 (4月7日 16時) (レス) @page13 id: 2c4192e77a (このIDを非表示/違反報告)
あさなさな(プロフ) - Suzyさん» ありがとうございます…♡ (4月7日 10時) (レス) id: 4d4d65fc30 (このIDを非表示/違反報告)
Suzy(プロフ) - あさなさなさんの···繊細な表現がすきです💙❤💙 (4月5日 23時) (レス) id: 8ccc3081cc (このIDを非表示/違反報告)
あさなさな(プロフ) - りつうさん» 主人公の相談に乗ってくれる人がなかなか居なかったので、ようやくのヨンジュン先輩でした!それぞれのキャラクターの心情まで深く読んでいただけて嬉しいです!素敵なお言葉もありがとうございます! (3月18日 12時) (レス) id: 4d4d65fc30 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:あさなさな | 作成日時:2024年3月15日 18時