156:あの日のココナッツ ページ7
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「美味しいよ、じゃなくて幸せになるよ、なんだ」
『美味しい通り越してるもん』
「ふふっ、うん。そうだね」
『ね』
クレープ生地がしっとりしていて生クリームが自然な甘さ。
でもティラミスの蕩けそうな甘さも良い。
友達とどこかに食べに行く事もなければ、頻繁にケーキを買って皆で食べるような家庭でもない。
あまり食べてこなかったデザートが至福すぎて、もはや悩ましい。
気が付けばお皿は空っぽで、次に食べるデザートを追加で取ってくる。
案外お腹いっぱいになっちゃってるんだけど、何故か食べれてしまう不思議。
「ほっぺハムスターみたいになってる」
ってハムスターみたいに膨らましたソクジンくんに言われたから、
『絶対に人の事言えないと思うよ』
って返すと「え」とキョトン顔。
ペタっと両頬を押さえたポーズが可愛らしい感じになってる。
その反応にクスクス笑ってたら、ソクジンくんも眉尻を下げる。
「あ、ねぇA。こっちも美味しいから食べてみて」
『どれ?』
「白いフワフワの、何だっけ」
『あ、ココナッツロングの』
言っている途中でふと、去年のクリスマスが頭をよぎった。
「ん?どうした?ココナッツ苦手?」
『ううん、好きだよ』
Мくんの口についたクリームと、その後…
でも次に浮かんでくるのは、完全に逸らされた横顔。
ホソク先輩の冷たい背中。
「ん、こっちのチョコのも美味しい。ザ…ザットみたいな名前だったよね」
『ソクジンくんごめん。少しお手洗いに行ってくるね』
「あ、うん」
手荷物を持って広い会場を出る。
なんとなくトイレを探すけれど、本当の目的は気持ちを切り替えるため。
ダメ、ダメ。Mくんのキスなんて思い出しちゃ…ダメ。
またして欲しいなんて、今は、まだ…
悶々としながら歩いていたら、私がさっきいたビュッフェ会場とはまた雰囲気の違った、立食パーティー形式の会場の前に来てしまった。
かなりボーっとしていた。
明らかに本当にセレブな感じの人たちばかりで、慌てて戻ろうとして、どっちから来たか分からなくなってしまった。
『どうしよう』
また適当に歩いていたら戻れるのかもしれないけれど、こういう所で行ったり来たりして迷子って思われるのは恥ずかしい。
まず今いる部屋の名前を見ようとして、立てかけられた看板に目が留まった。
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あさなさな(プロフ) - りつうさん» どっちも最高学年で生徒会の上の立場なので、嫉妬のような感情や一面は理性で隠してたんだと思います。ナムジュンさんの想いも、明かしていけたら…! (4月8日 13時) (レス) id: 4d4d65fc30 (このIDを非表示/違反報告)
りつう(プロフ) - 嫉妬によりMくんとナムさんの見えてなかった一面が顔を出しましたね〜!ナムさんもホソク先輩のことで葛藤したり懊悩してたのかな〜と想像してしまいました😢 (4月7日 16時) (レス) @page13 id: 2c4192e77a (このIDを非表示/違反報告)
あさなさな(プロフ) - Suzyさん» ありがとうございます…♡ (4月7日 10時) (レス) id: 4d4d65fc30 (このIDを非表示/違反報告)
Suzy(プロフ) - あさなさなさんの···繊細な表現がすきです💙❤💙 (4月5日 23時) (レス) id: 8ccc3081cc (このIDを非表示/違反報告)
あさなさな(プロフ) - りつうさん» 主人公の相談に乗ってくれる人がなかなか居なかったので、ようやくのヨンジュン先輩でした!それぞれのキャラクターの心情まで深く読んでいただけて嬉しいです!素敵なお言葉もありがとうございます! (3月18日 12時) (レス) id: 4d4d65fc30 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:あさなさな | 作成日時:2024年3月15日 18時