154:招待状 ページ5
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あんまりすぐいつもの調子に戻ってしまったから、困惑しながらもちょっと睨んでみたら、無視して予定の確認を進めてくる。
『うん、大丈夫だよ』
「それなら…」
ソクジンくんがリュックからクリアファイルを取り出す。
真っ白な横型の洋封筒が入っていた。
「ホテルでデザートビュッフェの試食会?みたいのがあるらしくて、その招待状、親に貰った」
『え…!凄い、このロゴって…ランチでも下手したら何万円ってするようなとこだよね』
宿泊なんてきっと、想像もできないような値段の所。
前にお姉ちゃんがテレビを見ながら、泊まってみたいってずっと羨ましがってた。
「みたいだね。でも新しく展開予定のデザートビュッフェは若年層向けらしくて、試食会には学生も来て欲しいみたい」
『こんな…一緒に行くの私で良いの?』
驚きのあまりにそう聞くと「A以外に誰が行くの?」と聞き返された。
だって色々申し訳ないし、慣れないから相応しくないような気もした。
そんな私のグルグルを読んだのか、ソクジンくんがククッと笑う。
「素直に喜んでくれれば良いのに。笑顔が見たくて誘ってるんだから」
『……ふぁい』
返事をしたつもりが、甘噛みしてしまう。
それがツボったのか、ソクジンくんは肩を震わせてる。
「笑わないで」って肩を叩いてもヒャって時折高く抜ける声がますます止まらなくなるだけで、私も一緒に笑えてきてしまう。
ひとしきり済んで、ソクジンくんの赤い目元が笑いすぎの涙に変わった頃。
思い出したようにあっけらかんとした顔で私を見た。
『?』
「好き」
なんか、これ、耐えらんないって思ってベンチから勢いよく立ち上がる。
『うち、すぐそこだし帰るね。ここまで送ってくれてありがとう。土曜日はよろしくお願いします』
「は、え?」
慌ててリュックにファイルを突っ込んで、小走りで追いかけてくる。
すぐに横に並ばれて顔を見上げたら、ムスッとした顔。
「きちんと家まで送るから。土曜日までは」
『…ありがとう』
「どういたしまして」
あっという間に家の前に着く。
「じゃあ…」と手を上げると、「明日ね」と目を細める。
背中を向けた瞬間、手を掴まれた。
「土曜日楽しみ。多分、俺のために、とびっきり可愛くしてくれるんだろうな」
「マナーでしょ?」って反発してみたら、「それでもだよ」って包まれてしまった。
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あさなさな(プロフ) - りつうさん» どっちも最高学年で生徒会の上の立場なので、嫉妬のような感情や一面は理性で隠してたんだと思います。ナムジュンさんの想いも、明かしていけたら…! (4月8日 13時) (レス) id: 4d4d65fc30 (このIDを非表示/違反報告)
りつう(プロフ) - 嫉妬によりMくんとナムさんの見えてなかった一面が顔を出しましたね〜!ナムさんもホソク先輩のことで葛藤したり懊悩してたのかな〜と想像してしまいました😢 (4月7日 16時) (レス) @page13 id: 2c4192e77a (このIDを非表示/違反報告)
あさなさな(プロフ) - Suzyさん» ありがとうございます…♡ (4月7日 10時) (レス) id: 4d4d65fc30 (このIDを非表示/違反報告)
Suzy(プロフ) - あさなさなさんの···繊細な表現がすきです💙❤💙 (4月5日 23時) (レス) id: 8ccc3081cc (このIDを非表示/違反報告)
あさなさな(プロフ) - りつうさん» 主人公の相談に乗ってくれる人がなかなか居なかったので、ようやくのヨンジュン先輩でした!それぞれのキャラクターの心情まで深く読んでいただけて嬉しいです!素敵なお言葉もありがとうございます! (3月18日 12時) (レス) id: 4d4d65fc30 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:あさなさな | 作成日時:2024年3月15日 18時