153:理屈じゃないよね ページ4
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「好きだよ」
柔らかい表情は、ソクジンくんの心が伝わってくるには十分で。
言葉も、表情も、今までの行動も。
全て揃えて目の前に出してくるなんて、本当にズルいよ。
「…いつも頑張ってて、なのに報われなくて苦しんでて…気づいた俺だけが守れるんだって、俺がAの為に何かしてあげたいって。
喋るようになってくれて、本当に嬉しかった。ふざけたらノッてくれて、笑ったら可愛くて、価値観のズレだって楽しめて、いつの間にか訳わかんないくらい好きで」
ふっと一瞬だけ止まる。
「その真っすぐなとこにつけ込んで、困らせた」
伝えられるもの全てを受け取ろうとしたら、あまりに胸がいっぱいになってしまって。
キリキリ痛んで返せない感情が、目の奥をツンとつつく。
「ねぇAも分かるでしょ、この気持ち。諦められない、この…」
切に訴えかけてくるようなソクジンくんの赤らんだ目は、瞬きが増えていく。
水分量を調整するように。誤魔化すように。
『……分かる、よ』
消えてくれない気持ちの事。
私たち向きは違うけど、同じ気持ちを持ってる。
もう一度瞬きをした。端正な目元がキラっと光った。
ポロポロと大粒の涙がその頬を伝っていく。
「見ないで」
『ソクジンくん』
「見ないでよ。これ以上格好悪い所、見せたくない」
『ごめんなさい』
「どっかいって」
『そんな事できない』
ソクジンくんは静かに泣き続けた。
私はただ横にいるだけ。
不思議だった。
頭を悩ませて、頭で考えて、感情はきっと脳のどこかにあるって思うのに…
痛いのは心臓の所。
心は理屈じゃ、説明できないよね。
__
「ヤバいね、俺。初めてこんな泣いたよ」
『ソクジンくん…』
「やっぱり最後にデートしようよ」
『え?』
「嫌かもしんないけど、仮とは言えこれが彼氏の最終日なんて嫌だし。
Aと良い思い出を残したい」
『うん』
「そんな暗い顔しないで」
『ありがとう、ごめんね…』
無理やり口角を上げようとしたけど、多分少し引きつってた。
「ほんと、俺って好きな人の幸せは願えないタイプなんですけど。自分で幸せにしてあげたいんですけど」
『すぐ、そうやって…』
「困り顔見るのも楽しいね」
『悪趣味だ』
「A限定なのに」
『……』
「あー、あと、土曜日なんだけど、本当に大丈夫?」
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あさなさな(プロフ) - りつうさん» どっちも最高学年で生徒会の上の立場なので、嫉妬のような感情や一面は理性で隠してたんだと思います。ナムジュンさんの想いも、明かしていけたら…! (4月8日 13時) (レス) id: 4d4d65fc30 (このIDを非表示/違反報告)
りつう(プロフ) - 嫉妬によりMくんとナムさんの見えてなかった一面が顔を出しましたね〜!ナムさんもホソク先輩のことで葛藤したり懊悩してたのかな〜と想像してしまいました😢 (4月7日 16時) (レス) @page13 id: 2c4192e77a (このIDを非表示/違反報告)
あさなさな(プロフ) - Suzyさん» ありがとうございます…♡ (4月7日 10時) (レス) id: 4d4d65fc30 (このIDを非表示/違反報告)
Suzy(プロフ) - あさなさなさんの···繊細な表現がすきです💙❤💙 (4月5日 23時) (レス) id: 8ccc3081cc (このIDを非表示/違反報告)
あさなさな(プロフ) - りつうさん» 主人公の相談に乗ってくれる人がなかなか居なかったので、ようやくのヨンジュン先輩でした!それぞれのキャラクターの心情まで深く読んでいただけて嬉しいです!素敵なお言葉もありがとうございます! (3月18日 12時) (レス) id: 4d4d65fc30 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:あさなさな | 作成日時:2024年3月15日 18時