164:そういう人間 ページ15
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「夜に出歩いていたのはウナをかわすっていうのが一番の目的だったとは思う。
最初は何度も反対した。
けれど夜のああいう場所は、家の事情や精神的な理由で学校に行けない、行かない選択をする人も沢山いる。
データの数字や聞いた話だけじゃなくて、関わりたいって。
学びの機会を一人でも多く平等に持てるようにする。この家に生まれた偶然をしっかり生かせるように自分にできる事をしたい。その為には知らないと何もできないと論破されてしまった」
やっぱりホソク先輩は、隠し事ばかりだ。
だけどそれは…卑怯さなんて一つもなくて、知れば知るほど深みを増していく。
高校受験期。
親に不満を抱きながらも言われた事しかせず不幸そうな顔をしていた私は、あの日のМくんの目にどう映ったのだろう。
そんな私に声をかけてくれたきっかけは、もしかしたら慈善だったのかもしれない。
「チョン・ホソクとはそういう人間だ。優しすぎるあいつが必要以上に傷つかなくていいように、できる事は全て請け負う。
軽い気持ちなら、これ以上踏み込むべきではない。
馬鹿ではないから、分かるよね」
もう関わるなとはっきりした拒絶…なのかな。
本当に拒絶したいならホソク先輩の今までの事なんて教えずに、更に追いつめればいい。
ナムジュン先輩とはきっと、そういう人間。
『分かりました』
言った瞬間その眉間に深くシワが寄って、やっぱり拒絶ではなかったと確信を得る。
『ホソク先輩を傷つけない為に、ホソク先輩の側に居ます。
今はまだ足りないから、だから、あと少し…』
「ソクジンは」
『ソクジンくんは、
……ソクジンくん!ど、どうしよう。ナムジュン先輩、今すぐ行ってまだ追いつけると思いますか?』
「さぁ」
『今日までだったんです。今日までだから、こんな…』
「……事情は分からないけど、精算をしないならまだ信用はできない。
あんなホソギ、俺はもう見たくない」
聞き返すよりも先に、「エレベーターはあっち」と指さしてスタスタと戻っていく。
『ありがとうございます…!』
凄く気になる事を言われてしまったけれど、でもソクジンくんを探したい。
まだバスに乗ってないかな?それまでに追いつける?
エレベーターを降りて、はしたないとは思いながらも急ぎ足でエントランスを抜けて自動ドアをくぐる。
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あさなさな(プロフ) - りつうさん» どっちも最高学年で生徒会の上の立場なので、嫉妬のような感情や一面は理性で隠してたんだと思います。ナムジュンさんの想いも、明かしていけたら…! (4月8日 13時) (レス) id: 4d4d65fc30 (このIDを非表示/違反報告)
りつう(プロフ) - 嫉妬によりMくんとナムさんの見えてなかった一面が顔を出しましたね〜!ナムさんもホソク先輩のことで葛藤したり懊悩してたのかな〜と想像してしまいました😢 (4月7日 16時) (レス) @page13 id: 2c4192e77a (このIDを非表示/違反報告)
あさなさな(プロフ) - Suzyさん» ありがとうございます…♡ (4月7日 10時) (レス) id: 4d4d65fc30 (このIDを非表示/違反報告)
Suzy(プロフ) - あさなさなさんの···繊細な表現がすきです💙❤💙 (4月5日 23時) (レス) id: 8ccc3081cc (このIDを非表示/違反報告)
あさなさな(プロフ) - りつうさん» 主人公の相談に乗ってくれる人がなかなか居なかったので、ようやくのヨンジュン先輩でした!それぞれのキャラクターの心情まで深く読んでいただけて嬉しいです!素敵なお言葉もありがとうございます! (3月18日 12時) (レス) id: 4d4d65fc30 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:あさなさな | 作成日時:2024年3月15日 18時