161:肩甲骨 ページ12
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ホソク先輩がおもむろに立ち上がる。
「この部屋で、ゆっくりしていきな」
『え…?』
「俺は会場に戻るから」
『ホソク先輩』
「じゃあまた、学校で」
『ホソク先輩…?』
あまりにもあっさり部屋から出て行く。
追いかけようとして、でも追いついたってどうしようもない。
ホソク先輩のお父さんに無計画に意見して、不愉快な思いをさせただけ。
あそこで連れ出してもらってなかったら、もっと不躾な事を言っていたかもしれない。
取り返しのつかない事までは言ってないと信じたい…
たくさん噛まれた右肩や首筋が、今になってジクジクと広がるように痛む。
でもそれさえ嬉しいと思ってしまう私はおかしいのかな。
今日は無視されなくて良かったって、触ってくれたって、きゅーって締め付けられる心がここにあるの。
触れ合った部分が感応するように同じ温度になっていくの、凄く心地よかった。
恥ずかしくてどうすれば良いか分からないだけで、ひとつも嫌じゃなくて…
ポンと通知が鳴って目覚めるようにスマホを確認すると、ソクジンくんからだった。
ソクジンごめん。先に帰るね
その文字が目に飛び込んできた瞬間、慌てて立ち上がる。
ソクジンくん…!
すぐに部屋のドアを開けたら、向かい側にナムジュン先輩が寄りかかって立っていた。
『あ…』
ゆっくりまばたきをして、壁から背中を離す。
「ホソクは取り込み中だし、ソクジンならもう帰ったよ」
後ろでバタンと扉が閉まって、袋小路に追いつめられたような気分になる。
『ソクジンくんはさっきですか?今すぐ行けば…あの、エレベーターの場所、』
「俺はAが出てくるのを、待ってたんだけど」
私?を、待ってたの?
どうして…
肩甲骨がズキっとして、責められたように顔を下げる。
『でもソクジンくんが…』
「君はそろそろ学んだ方が良い」
強い言い方に、身体は固まった。
私、また、この人に現実を突きつけられるのが怖い。
有無を言わせない圧力で、革靴の音がすぐ側まで近づいてくる。
「俺が一番大切なのはホソギだけだ。だから君の事だってどうでもいい」
わざわざ、噛み含めて聞かせるように発音する。
『……分かって、ます…』
「分かってない。君は大切な全てを守っていける程器用なの?正直、優柔不断にしか見えない。君の努力のつもりの行動は、俺にはただ滑稽なんだよ」
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あさなさな(プロフ) - りつうさん» どっちも最高学年で生徒会の上の立場なので、嫉妬のような感情や一面は理性で隠してたんだと思います。ナムジュンさんの想いも、明かしていけたら…! (4月8日 13時) (レス) id: 4d4d65fc30 (このIDを非表示/違反報告)
りつう(プロフ) - 嫉妬によりMくんとナムさんの見えてなかった一面が顔を出しましたね〜!ナムさんもホソク先輩のことで葛藤したり懊悩してたのかな〜と想像してしまいました😢 (4月7日 16時) (レス) @page13 id: 2c4192e77a (このIDを非表示/違反報告)
あさなさな(プロフ) - Suzyさん» ありがとうございます…♡ (4月7日 10時) (レス) id: 4d4d65fc30 (このIDを非表示/違反報告)
Suzy(プロフ) - あさなさなさんの···繊細な表現がすきです💙❤💙 (4月5日 23時) (レス) id: 8ccc3081cc (このIDを非表示/違反報告)
あさなさな(プロフ) - りつうさん» 主人公の相談に乗ってくれる人がなかなか居なかったので、ようやくのヨンジュン先輩でした!それぞれのキャラクターの心情まで深く読んでいただけて嬉しいです!素敵なお言葉もありがとうございます! (3月18日 12時) (レス) id: 4d4d65fc30 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:あさなさな | 作成日時:2024年3月15日 18時