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それから一息つかせる為に大きく呼吸をすれば、まだ冷たい夜の空気が肺に入ってきた。
「Aちゃん」
彼に名前を呼ばれると同時に、再びネックレスが目の前に差し出される。
視線を落とした先には、優しいオレンジ色の天然石。
不思議と、先程よりもずっと綺麗に見えた。
すると、不意に彼の指が顎にかかり、そのまま視線を上に向けられた。
少し色素の薄い彼の瞳と視線が交わり、心臓が早鐘を打ち始める。
「───僕に、着けさせてもらえますか?」
『では、お願いします・・・』
そう緊張気味に言葉を返せば、ニコリと彼は笑って、箱からネックレスを取り出した。
彼の両手が首の後ろに回り、カチッとフックの音が鳴る。
「ほい」
『ありがとうございます。綺麗な石ですね』
「サードオニキスって石なんやて」
『サードオニキス・・・・・・どんな意味が込められてるんですか?』
首元の石を指先で撫でながら、なんの気無しにそう聞いてみる。
すると、彼は含んだような笑みを浮かべた。
「それは、自分で後で調べてみ?」
『・・・・・・出た』
「なっ、出たって何やねん」
『そうやって含み持たせるとこ』
「いやいや、時間差の楽しみってもんやんか!」
『まあ、別にいいですけどね───クシュッ・・・』
やわやわと髪の毛を揺らす風が、私達の間を通り抜けていく。
今年の3月は、例年よりも暖かいとは言われているが、やはり朝晩はまだまだ冷え込む。
ましてや、盆地の京都では尚更のようだ。
「3月でも、夜はまだまだ冷えるなぁ。はい、僕のコート羽織り?」
『いや、大丈夫ですよ?』
彼だって、特別着込んでいる訳ではない。
それなのに、上着を奪ってしまうのは申し訳なくて、私はすぐに断りを入れた。
「大丈夫やないの。もっと甘えて?」
だが、彼の方も首を横に振りこちらの意見を突っぱねると、ためらいなくコートを脱いだ。
そしてそれを、ボスッと頭の天辺から被せられた。
それから顎の下で袂をキュッと合わせて、コートの襟部分で顔を縁取られる。
『・・・・・・なんか、思ってたのと違うんですけど』
「へっへっへ!妖怪、雪ん子のできあがりや!もしくはジャミラ!またの名をカオナシ!」
そうだった。
どんなに甘い雰囲気でも、一筋縄でいかないのが、この"丸山隆平"という男だった。
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めめこ(プロフ) - 楓さん» そう言って頂けると嬉しいです!読んで頂きありがとうございました! (2022年11月26日 19時) (レス) id: ca01f690f5 (このIDを非表示/違反報告)
楓(プロフ) - めめこさんのまるちゃんが大好きです!お誕生日おめでとうございました^ ^ (2022年11月26日 10時) (レス) @page35 id: 2ce83629e3 (このIDを非表示/違反報告)
めめこ(プロフ) - まいさん» 楽しんでもらえたなら良かったです!また読んで頂きありがとうございます! (2021年3月15日 18時) (レス) id: ca01f690f5 (このIDを非表示/違反報告)
まい(プロフ) - バレンタインから1ヶ月楽しみに待ってました!ホワイトデーも「キュン」をありがとうございます。 (2021年3月15日 3時) (レス) id: 289a5ec9d0 (このIDを非表示/違反報告)
めめこ(プロフ) - みーこさん» ありがとうございます!これから少しずつお話増やしますので、また読みにきてください! (2021年3月14日 20時) (レス) id: ca01f690f5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:めめこ | 作成日時:2021年3月14日 15時