◇33(丸山side) ページ33
＊＊＊
ジャムのアルバムが出て、ツアーのリハーサルも大詰めになる頃、梅雨に入った関東では今日も雨が降っていた。
湿気のせいで、そっぽを向いてしまった自分の前髪を撫で付けながら、スタジオの鏡に写る自分とにらめっこをする。
これだから癖毛は嫌なんだ･･･。
｢はあ･･･、ちょっと外の空気吸お･･･｣
廊下に出て深く空気を吸うと、微かに雨のにおいがした。
｢───あれ？｣
そして、見慣れた姿を見つける。
俺は、先を歩いていく背中を慌てて追いかけ、その華奢な手首を捕まえた。
｢Aちゃん？｣
『───丸山さん』
彼女はびっくりした様子でこちらを振り向くと、俺の名前を呼んだ。
やっぱりそうだった。
俺は途端に嬉しくなって、捕まえた彼女の手を無意識にぎゅっと握る。
『休憩ですか？』
しかし、彼女はすぐに俺の手を引き剥がすと、いつもと変わらぬトーンで言った。
｢おん。Aちゃんは？打ち合わせ？それとも───｣
俺に会いに来てくれたん？
『はい、皆さんのリハが終わった後に、スタッフの方々と打ち合わせなんです』
｢そっか。お疲れさま｣
そんな訳ないと分かっていても、少し寂しい気持ちになる。
ほんま、アホやな･･･。
───きゅるるる〜･･････。
『っ･･････！！』
｢あ･･･｣
すると、可愛らしい小さな音が静かな廊下に鳴った。
同時に、顔を真っ赤にさせた彼女が、内臓が潰れるんじゃないかという勢いで腹を押さえた。
｢Aちゃん、お腹空いてるん？｣
『･･････はい』
｢ふふ、ちゃんとご飯は食べなアカンよ？ほら、あっちに差し入れ置いてあるから、取りに行こう？｣
尚も腹を押さえている彼女の手を取ると、俺は少し強引に引っ張った。
『いえ、大丈夫ですから･･･！』
｢大丈夫とちゃうよ。お腹空いてたら、頭働かへんやろ｣
『オカンか･･･』
ぽつりと投げられたツッコミに、俺はクスリと笑みをこぼす。
繋いだ彼女の手は、いつもより体温が高かかった。
｢───さ、どれでも好きなんお食べ〜｣
テーブルにずらりと並べられた差し入れのお菓子を、俺は自慢気な顔で彼女の前へ差し出した。
『じゃあ、1つだけ頂きます･･･』
そう控え目に言って、彼女は吟味を始めた。
甘いものを真剣な顔で選ぶその姿は、やはり普通の女の子のそれで、微笑ましくて愛おしい。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 549人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「関ジャニ∞」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
めめこ(プロフ) - りなさん» ありがとうございます！楽しく読んでいただけて嬉しいです。続編作成中ですので少しお待ちください！ (2019年6月6日 12時) (
レス) id: ca01f690f5 (このIDを非表示/違反報告)
りな - 本当におもしろいです！早く続き見たいです！ (2019年6月5日 23時) (レス) id: 9dc5982e37 (このIDを非表示/違反報告)
めめこ(プロフ) - ゆんゆさん» いつも読んでいただきありがとうございます！ヤキモチを通り越すくらいゆんゆさんにドキドキしてもらえるような作品にしたいと思います(笑)これからもよろしくお願いします！ (2019年5月26日 21時) (レス) id: ca01f690f5 (このIDを非表示/違反報告)
ゆんゆ(プロフ) - いつも更新を楽しみにしています。まるたーの私なので、上手くいって欲しいと思う反面、感情がリアルに伝わるってくるので、上手くいったらヤキモチ妬きそうで今から心構えを、なんて思ってしまいます(笑)これからも楽しみにしています！ (2019年5月26日 19時) (レス) id: e91edee03b (このIDを非表示/違反報告)
めめこ(プロフ) - colorfulcrayon2さん» ご感想ありがとうございます！プロだなんて嬉しすぎます(><)更新頑張ります！！ (2019年5月23日 7時) (レス) id: ca01f690f5 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：めめこ | 作成日時：2019年5月3日 15時
