◇42 ページ42
ライトアップされたデパートや銀行のきらびやかな建物を見上げれば、何だか少し大人の気分になった。
すると、鞄の中で仕事用のケータイが鳴った。
画面を確認すると、｢メンバー4｣と表示されている。
『はい、Aです』
(どうやった？)
電話に出ると、丸山の開口一番はそれだった。
『面白かったですよ？タマの着ぐるみもよく似合ってました』
(へへ、ああいう形でキャーキャー言われるんも悪くないなぁ)
『じゃあ、次のライブの衣装として考えておきます』
(えぇ〜、そこは冗談やんか･･･)
明らかに声がしぼんでいくのが面白くて、私は電話の向こうにバレないよう、こっそりと笑いを漏らす。
『でも、大分お客さんの心を鷲掴みにしてたみたいですけど？可愛いー！って大歓声だったじゃないですか。しっかりハートを盗んでましたね』
すこし皮肉るようなニュアンスも含めて言えば、電話の向こうで丸山も笑っていた。
実は、イベントのキャスト登壇に丸山の姿だけがなかったのだが、本当は猫のキャラクターの着ぐるみにこっそり入って客席を"騙していた"というサプライズ演出があったのだ。
(───Aちゃんは？)
『ん？』
すると、さっきまでとは違う、丸山の落ち着いた声が返ってきた。
(Aちゃんのハート、僕に盗まれた？)
わざとか無意識か、意地の悪い質問だ。
『───さぁ、どうでしょうね？』
でも、ここで素直に頷くわけにもいかず、私も意地の悪い曖昧な返事をした。
(じゃあその心、)
すると、私のいる歩道のすぐ脇に、黒のバンが横付けされた。
｢───俺が盗んでもええ？｣
いつの間にか、電話口から聞こえていたはずの声が背後に回って、制汗剤と嗅ぎ慣れた柑橘系の匂いが鼻をかすめる。
そして次の瞬間には、両脇を抱えられ、バンの中に引きずり込まれていた。
『えっ！？』
目の前で無情に閉まっていくドアに、私は少なからず焦りと恐怖を感じた。
｢お姫様の強奪成功〜！｣
しかし、その明るい声に、私はすぐに拍子抜けする。
『丸山さん･･････』
振り返ると、そこにはラフなシャツの上にジャケットを羽織った丸山がいた。
いったい何が起きているのか、いささか錯乱状態の私には、すぐにこの状況を理解できなかった。
しかし一方の丸山は、放心している私をよそに、運転席のマネージャーにニコニコと声をかける。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 549人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「関ジャニ∞」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
めめこ(プロフ) - りなさん» ありがとうございます！楽しく読んでいただけて嬉しいです。続編作成中ですので少しお待ちください！ (2019年6月6日 12時) (
レス) id: ca01f690f5 (このIDを非表示/違反報告)
りな - 本当におもしろいです！早く続き見たいです！ (2019年6月5日 23時) (レス) id: 9dc5982e37 (このIDを非表示/違反報告)
めめこ(プロフ) - ゆんゆさん» いつも読んでいただきありがとうございます！ヤキモチを通り越すくらいゆんゆさんにドキドキしてもらえるような作品にしたいと思います(笑)これからもよろしくお願いします！ (2019年5月26日 21時) (レス) id: ca01f690f5 (このIDを非表示/違反報告)
ゆんゆ(プロフ) - いつも更新を楽しみにしています。まるたーの私なので、上手くいって欲しいと思う反面、感情がリアルに伝わるってくるので、上手くいったらヤキモチ妬きそうで今から心構えを、なんて思ってしまいます(笑)これからも楽しみにしています！ (2019年5月26日 19時) (レス) id: e91edee03b (このIDを非表示/違反報告)
めめこ(プロフ) - colorfulcrayon2さん» ご感想ありがとうございます！プロだなんて嬉しすぎます(><)更新頑張ります！！ (2019年5月23日 7時) (レス) id: ca01f690f5 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：めめこ | 作成日時：2019年5月3日 15時
