2 ページ2
『お花屋さんになりたいから、です･･･』
そこで、私は赤面してしまった。
己の口から出たまるで小学生のような回答に、自分の頭を叩きたくなる。
少なからず職歴のある大人として、もっとそれらしい事は言えなかったのだろうか。
もう手遅れとは分かっていても、つぐんだ口を手で覆ってしまった。
「フッ･･･そらそうやんな」
すると、その男性は小さく吹き出して、困ったような笑顔を浮かべそう言った。
笑った事で見えた八重歯が、なんだかワンコみたいだと思ったのは、私の心の中だけに留めておこう。
一方の男性はと言えば、クルリとこちらに背を向けて俯くと、余程面白かったのか、いまだにクツクツと笑って肩を震わせていた。
私はどうしたものかと考えあぐねるが、特に何かできる訳でもなく、ただ男性の笑いがおさまるのを待つしかなかった。
「はぁ〜･･･すまん、すまん。むっちゃ笑ったわ･･･」
そして、深呼吸をしながらようやっとこちらに向き直った男性は、目尻に溜まった涙を指で拭っていた。
そこまで笑う程、私は変な事を言っていただろうか？
『･･･私、そんなに変な事言ってましたか？』
気付けば、無意識にそんな文句を垂れてしまっていた。
しかし男性は一瞬だけ目を見開くと、すぐにニッと笑って求人の貼り紙を指差す。
「この貼り紙で問い合わせてくるなんて、十分変やろ」
『･･････』
「明日、履歴書持ってこれる？」
『え？』
「え？面接の申し込みちゃうん？」
そして「なんや、冷やかしかいな」と男性が訝しげに言葉を続けるものだから、私は慌てて首を横に振った。
『持ってきます！持ってきますけど、その前に───』
この募集は、正社員でしょうか？それとも、アルバイトでしょうか？
＊＊＊
「ほい、これ。お前のエプロンな？あと、今日はバイトが1人来るから、来たらそん時にまた紹介するわ」
『はい、ありがとうございます』
村上店長から差し出された茄子紺色のエプロンを受け取ると、私はさっそくそれを身に着ける。
エプロンの胸元には"A"と書かれたネームプレートが付けられ、このお店の一員になったという実感に少なからず胸が踊った。
ここは、大阪市内の駅から徒歩10分程の所にある"ヴィレッジアップ"とい花屋である。
ここの求人募集の貼り紙を見つけたのが一昨日、面接を受けたのが昨日、そして本日が出勤1日目。
とんでもないスピード採用だ。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 99人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
めめこ(プロフ) - ゆきさん» 励みになるコメントありがとうございます！✨ 更新頑張りますので、これからもお話を楽しんでください😊 (4月9日 18時) (
レス) id: ca01f690f5 (このIDを非表示/違反報告)
ゆき(プロフ) - めめこさんの書くお話が、占ツクに投稿されているお話の中で一番好きです。更新楽しみに待っています。 (4月4日 19時) (レス) @page42 id: 159543e1b4 (このIDを非表示/違反報告)
めめこ(プロフ) - アッキーナさん» 読んで頂きありがとうございます！嬉しいお言葉です✨ (2月8日 7時) (レス) id: ca01f690f5 (このIDを非表示/違反報告)
アッキーナ(プロフ) - 素敵なお話すぎて一気に読んでしまいました！この先の展開楽しみにしてます。 (1月31日 16時) (レス) id: ee5b45e1af (このIDを非表示/違反報告)
めめこ(プロフ) - 海嵐さん» ありがとうございます！今後の展開も楽しみに読んで頂けたら嬉しいです！ (1月6日 18時) (レス) id: ca01f690f5 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：めめこ | 作成日時：2023年12月29日 19時
