■7(大倉side) ページ7
「もしかして、お湯張ってある？」
扉を開けた瞬間に、顔面をふわりと撫でていった湯気。
もしかして、わざわざ俺とマルの為にAが沸かしておいてくれたのだろうか。
実を言うと、この浴室は俺とマルの専用という事になっている。
これは俺達が入居する際に取り決めた話で、申し訳ないが彼女には、上のフロアのシャワールームをずっと使ってもらっていた。
故に、ここに彼女が入ってくる事はないのである。
しかし、何故この時間に俺が帰ってくるとわかったのだろうか。
急遽スケジュールが変更になった事は知らないはずなのに───。
「───ま、ええか」
何はともあれ、すぐに風呂に入れるのは有り難い。
体にまとわり付く湿気と汗のベタつきを、早いところ流したかった。
俺はシャツを脱ぎながら浴室内へ入ると、バスタブに手を突っ込み湯加減を確認する。
まだ湯を入れたばかりだろうか、少し熱いが湯加減としては合格点だ。
俺は満足しながら手のお湯を払うと、脱衣所に一度戻ろうと浴室の扉へ手を掛けた。
しかし、こちらが触れる前に、その扉は開けられた。
「･･････」
『･･････』
そこに立っていたのは、ポカンと間抜けな表情を浮かべるAだった。
スカートこそ穿いているものの、上半身は露出度の高いキャミソールに薄手のカーディガンを羽織っているだけで、まるで脱衣途中というような出で立ちだ。
その手にはバスソルトを入れたカップが握られ、彼女の視線が俺の上半身を上から下へと往復していく。
「おお、気ぃ利くやん」
俺は必死に平常心を装いながらそう言葉を発すると、そのバスソルトを浴槽に投入し、再びカップを彼女の手に戻す。
それから何事もなかったかのように、俺は浴室の扉をピシャリと閉めた。
するとその途端、扉の向こうから彼女のわなわなと震える声が漏れ出した。
『あ･･･ぁ･･････しっ、失礼しましたぁぁあー！！！！』
泣き叫ぶような声と共に、彼女の影が扉の前から消えていく。
そしてあの勢いのままリビングルームへ突入したのだろうか、家具にぶつかるようなガタンッという音が何度も響き渡っていた。
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匿名希望 - 更新ありがとうございます！めちゃくちゃ好きです！ (2022年10月11日 1時) (
レス) @page27 id: cc9a8b8ec1 (このIDを非表示/違反報告)
匿名 - 更新ありがとうございます！続きがたのしみです◎ (2022年4月5日 4時) (レス) @page4 id: d8f1726f33 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：めめこ | 作成日時：2022年4月3日 17時
