■5(大倉side) ページ5
車の窓枠に肘を置くと、梅雨の湿気で少しベタついていた。
スモークの貼られた窓の外では、静かに降る雨が夕方の街を濡らしている。
「寄る所ありますか？」
「いや、このまま家でええわ」
運転席のマネージャーから掛けられた声に、俺は気のない返事をし、再び視線を外に向けた。
急遽、仕事が1つ飛び、予定よりもだいぶ早く帰路につく事になった。
この皺寄せが後日くる事はわかっているが、突然与えられた自由時間に少し浮足立ったのは確かだ。
だが、このジメジメとした空気と止む様子のない雨を見て、何処かへ寄るのがとても億劫になってしまった。
たまには早めに帰って休むか───。
それに、あの日のモヤモヤがこの雨と同調でもしたか、段々と鬱々とした気持ちにもなってきた。
あの日も、こんな様な雨だったから───。
『すみません、お待たせしました･･･！』
そう言って、玄関で待つ俺の所へタオルを持ってきた彼女の顔は、驚くほど真っ赤に染まっていた。
その原因が誰かなんて、聞かなくても分かる。
きっと、マルだ。
俺が車を停めてる間に、いったいこの二人に何があったのか。
しかし、そんな事をずけずけと聞きに行ける程の親密度は、俺と彼女の間にはまだない。
俺は「ありがとう」と素っ気なく言ってタオルを受け取ると、全身にまとわり付いた雨を払った。
すると、彼女がハッとした表情を浮かべた。
『あ、あの、今の"すみません"はセーフですよね？』
「は？」
突然なのん話だろうか。
一瞬、彼女が何を言っているのか理解できなかったが、すぐにデコピンの事だとわかった。
確かに、不要な"すみません"に対してデコピンをお見舞いするという条件だったから、今のはセーフかもしれない。
しかし、このスッキリとしない胸のモヤモヤに、今回だけは無理やり理由付けたくなってしまった。
俺は濡れた前髪をかき上げて、目の前で不安気な表情を浮かべる彼女をジッと見つめる。
そしてその額に、ペシッと軽い音が鳴る程度のデコピンをお見舞いした。
『イタタッ･･･！な、何でですか･･･！？大倉さんの基準が難し過ぎます･･･』
額を押さえながら文句を垂れる彼女。
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匿名希望 - 更新ありがとうございます！めちゃくちゃ好きです！ (2022年10月11日 1時) (
レス) @page27 id: cc9a8b8ec1 (このIDを非表示/違反報告)
匿名 - 更新ありがとうございます！続きがたのしみです◎ (2022年4月5日 4時) (レス) @page4 id: d8f1726f33 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：めめこ | 作成日時：2022年4月3日 17時
