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「フッ、ごめん。ちょっとからかい過ぎてもうたね」
すると、これまでまとっていた丸山さんの雰囲気がパッと消え、いつもの柔らかい空気感に変わる。
手首を掴んでいた彼の手も離れていき、ついさっきまでの記憶が夢の出来事のような気さえした。
しかしそれでも、見上げた彼の表情は、いまだにどこかしんどそうだ。
そしてその考えが表情に出てしまっていたのか、丸山さんは困ったような笑みを浮かべて、それから私の頭にそっと手を置いた。
「そんなに心配せんでも大丈夫やで。気圧の変化でちょっとダルいだけやから。それに、今日は新月やし───」
心配してくれてありがとうな。そう柔らかな声音で言葉を付け足し、丸山さんは優しく私の髪を撫でていった。
その間も、私は彼から目を離す事ができずにいた。
透き通る茶色の瞳に、どこまでも吸い込まれてしまいそう───。
───ガチャ。
すると、玄関の扉が開く音が聞こえてきた。
大倉さんが戻ってきたようだ。
丸山さんの視線もそちらへと向けられ、同時に私の髪から手が離れていく。
そして玄関からは「ちょっとタオル持ってきてー」と、大倉さんが声を上げていた。
「Aちゃん」
『は、はい』
「ごめんやけど、大倉にタオル持ってってあげて？しばらくベッドで寝るわ」
『わかりました』
初めからそのつもりではいたが、その頼みにひとつ頷いて見せると、丸山さんは静かに笑みを浮かべた。
「ありがとう。ええ子やね」
そしてソファからふらりと立ち上がると、私が先程掛けたブランケットを持って、そのまま螺旋階段を上がっていく。
「───Aー？おらんのー？」
『はーい！今行きます！』
それから、大倉さんの再度の呼び出しに、私は急いで立ち上がると、洗面所からフェイスタオルを引ったくり、玄関へ向かった。
初めて見る丸山さんの表情や声、まとう空気───。
甘くむせ返るように心臓がギュッとなる。
どうしよう。
まだ顔が熱い。
顔が赤くなっている事、大倉さんに気付かれてしまうだろうか。
なんで、こんなに･･･───。
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匿名希望 - 更新ありがとうございます！めちゃくちゃ好きです！ (2022年10月11日 1時) (
レス) @page27 id: cc9a8b8ec1 (このIDを非表示/違反報告)
匿名 - 更新ありがとうございます！続きがたのしみです◎ (2022年4月5日 4時) (レス) @page4 id: d8f1726f33 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：めめこ | 作成日時：2022年4月3日 17時
