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「───夕方ぐらいまでには戻るんとちゃう？」
『え？』
「マルの事。朝から大阪で仕事やったから、その後なんも無ければ午後イチか夕方にはこっちに戻るやろ」
そう説明してくれる間も、大倉さんがこちら見る事はなかったし、声の抑揚もあまりなく淡々としていた。
だが、私に対してここまで話してくれた事が嬉しくて、僅かにだが私の心が弾んだ。
そうだ。
今はこんなに心の距離が遠いけれど、これから互いの事を知っていけば、少しは仲良くなっていけるかもしれない。
きっと、これはチャンスなのだ───。
『あの、せっかくですし、丸山さんが戻られたら、今日は3人でお夕飯でもどうでしょうか？その･･･歓迎会、的な？』
美味しいものと時間を共有すれば、自然と人の心は開くに違いない。
すると、こちらに背を向けて作業していた大倉さんの動きが、ピタリと止まった。
それからスッと立ち上がり、床に正座する私の前までやってくると、その大きな手が目の前に差し出される。
その動きの一つ一つがやけに様になっていて、私はポカンと口を開けたまま、ついその姿に見惚れてしまった。
「ハサミ」
『･･･え』
「はよ取って」
しかし、その視線は私をかすめる事すらなく、膝下に置いていたハサミへと向けられていた。
『あ、はい･･･どうぞ』
一瞬でも何かを期待した私を呪ってやりたい。
「それと───」
すると、私からハサミを受け取った大倉さんが、言葉を続ける。
「そういう馴れ合いみたいなの、いらんから。それに俺、夜から仕事やし」
『･･････あ、･･････』
今日、初めて彼と目が合ったかもしれない。
本来なら嬉しいはずなのに、その冷めた視線に射抜かれて、私は言葉を詰まらせるだけだった。
大丈夫。笑え───。
『───そう、ですよね。あはは、すみません』
いつも、会社や外でやっているみたいに、笑顔を貼り付ける。
そうしたら、波風立たずに終わるから───。
『お仕事、頑張ってください』
そう言葉を付け足し、目を細める。
狭まった視界の先で、大倉さんの眉間に僅かなシワが寄るのが見えた。
そして、何か言葉が返ってくるでもなく、すぐに彼の背中がこちらへ向けられる。
無理やり持ち上げた口角はすぐには戻せなくて、私はそのまま顔を俯かせた。
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めめこ(プロフ) - 匿名さん» 癒やしだなんて･･･！こちらこそ、ありがとうございます！ (2022年4月3日 8時) (
レス) id: ca01f690f5 (このIDを非表示/違反報告)
匿名 - 夜な夜な作品読ませていただいています、日々の癒やしです、ありがとうございます！ (2022年3月30日 2時) (レス) @page45 id: d8f1726f33 (このIDを非表示/違反報告)
めめこ(プロフ) - みーこさん» まさにうちキュンに影響された作品です(笑)引き続き応援よろしくお願いします！ (2022年2月21日 22時) (レス) id: ca01f690f5 (このIDを非表示/違反報告)
みーこ(プロフ) - うちキュンですね♡何か本当に頭の中にこのストーリーの映像が浮かびます(^^)応援しております！ (2022年2月20日 23時) (レス) @page24 id: bdc8ba7bac (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：めめこ | 作成日時：2022年2月11日 20時
