ルック・アス【掃き溜めの星】 (ページ29)

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僕達の少し前2【深川緋斗、金色愛誓】ページ29

しかし、愛誓はこの現状を心の何処かで安堵し、苦しんでいた。いつか緋斗が目覚め、自分を置いて何処かへ行ってしまうのではないか。そうしたら悲しいのは、傷付くのは自分一人だけだ。そんなの辛すぎる。
だから、自分の決心が揺らぐ前に、早く自分の前から居なくなれと、どれだけ距離を取ったところで、深く刻まれた緋斗の暗示は距離を取られただけ詰め寄っていく。
どれだけ傷付けても、突き放しても、ただただ自分だけを見て、自分だけを見てくれる。こんなにも幸せで、不幸なことは無い。こんなにも心地よい愛を受けても、愛を返すことは愛誓には出来ない。

どれだけ頭が良くても、人を完全に作りかえることなんてできない。どれだけ近づけようとも、どこかで綻ぶ。

終わりの見えた恋なんてするだけ無駄なんだ。時間の無駄、労力の無駄。無駄でしかないんだ。……そう言い聞かしたとしても、本心は理性でどうにかなるものでは無い。どれだけ嫌で抵抗したところで、本能は言うことを聞いてくれない。本当に自分なのか疑う程に。
何処かで期待していて、そんな自分に絶望する。

「(どうか、気付きませんように)」

確かに人肌の温かさを自身の体温と交わり、噛み締めながら、いつ終わるかわからない儚い幸せをその身に忘れない様に刻み込んでいた。

(○･ω･)ﾉ----end-----

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