僕達の少し前【深川緋斗、金色愛誓】 ページ28
「(可笑しい…どう考えてもおかしい)」
緋斗の腕の中にはすっぽりと愛誓が入っている。愛誓を包み込む緋斗の表情は愛しさと喜びで一杯で、そんな物には無縁な愛誓に取っては見るに堪えないものであった。
何故こんな状況なのか。簡単な話だ。愛誓が目が覚めたらこうなっていた。傍から見れば「なんだただのリア充か、散れ」やら、身長差から「誘拐かな?」と思うだろう。ただ、こんな事は日常茶飯事だ。レブルの人間からしたら見慣れた光景。愛誓は何も認めていないが、皆からは認知されている。
そんな中、愛誓は何が可笑しいと思っているのか。いつもの事のはずだ。何故愛誓が顔を曇らせている? 簡単な事だ。
もう遠の昔に洗脳なんて解けているのだ。
前々から可笑しいとは思っていた。自身の仕掛けた罠を忘れてしまう程愛誓は鳥頭では無い。3年前、愛誓は緋斗を壊した。そして、また造り上げた。再構築したのだ。深川緋斗という人間を。そして愛誓自身へ重い重い愛を、決して揺るぐことの無い愛を誓わせた。ただ、その愛には期限があった。1年程で終わる筈だった。終われば、次の人間を探して、再構築する。それを繰り返すつもりだった。それなのに。
「(何で此奴はいつまでもベタベタと……!)」
愛誓にすら予測出来なかった緊急事態は、一体どうしたらいいものか。
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