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｢いつまで見てんの？｣



まだ何か文句を言いたげな彼に
金拾ったんならさっさと帰れば、と
大倉さんは私にキスを落としながら言う。



｢最後まで見せたってもええけど｣



短く、短く、長く。
恋人なのかと思うほどのキスが甘く降り注ぐと



勢いよく玄関のドアが開いて
聞き慣れた彼の足音が遠ざかっていって



｢……面倒くせ、｣



ドアが閉まると同時に大倉さんは私から離れると
鍵をかけてふわぁ、とひとつ大きな欠伸をした。



｢……あの、大倉さん｣

｢あんなん全部嘘やで｣

｢…………｣

｢うるさくて寝られへんから追い払っただけ｣



彼がいなくなるとさっきの甘さが嘘のように
私と大倉さんの間にはぎくしゃくした空気が流れる。



｢さっきの10万円ですけど明日必ずお返ししますから｣



それだけは絶対言わなきゃと思って
寝る、って自分の部屋に向かう
大倉さんを追いかけたのに



｢いらん｣



答えはシンプル。



でも10万円なんて大金を
無職の大倉さんに払ってもらう理由はなくて



｢でも私が払わなきゃいけないお金だし｣



ドアの前で振り向いた大倉さんに
受け取ってもらわないと困ります、と訴えたけど



｢しつこい｣



10万で安心して昼寝できるなら安いもんや、って
そのお金の価値観はどうかと思う。



嘘と、キスと、10万円。



優しいのか優しくないのか
私には大倉さんという同居人が理解できそうにない。

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