恋味ドロップス(緑)

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週明け、月曜日は3月14日。
先輩に聞いた話によるとこの会社にはバレンタイン当番というのがあって、ホワイトデーには3倍返しをすることになっているらしい。



で、章大さんはバレンタインに義理チョコはいらないと宣言して。



ついさっき。
部署の皆の前でミワちゃんと付き合ってる、って堂々と答えてた。



そんな章大さんはやっぱりカッコ良くて。
愛されてるミワちゃんが本当に羨ましい。



だけど人の恋人を奪うような恋はしたくないし。
気持ちを切り替えないと、次の出会いを逃しちゃうから。



「安田さん、頼まれてた書類出来てます」

「ミワちゃん、また後で色々聞かせてねっ」



大丈夫。
章大さんにも。
ミワちゃんにも。
ちゃんと、仕事用の顔で笑えた。



とはいえ。
顔で笑った分、心で泣いて。



章大さんとミワちゃんが話してるのを見ると。
ちょっとだけ辛いのと、ちょっとだけ嫉妬しちゃうから。
部長に頼まれたコーヒーを淹れるフリしてサボりに行った給湯室で。



「あのさ、これ、良かったらもらってくれへん？」



同じ部署の大倉さんに声をかけられて。
昔懐かしい、ドロップスの缶を渡された。



同じ部署っていっても。
仕事の担当が違うと、話すことってほとんどない。



「・・・何でこれを、私に？」

「今日、ホワイトデーやから」

「でも、私、大倉さんに何も渡してないですよ」

「・・・おん。だから、来年ちょうだい」



まともに喋ったのが今日初めてとは思えないくらい。
一目惚れだとか、Aちゃんの事もっと知りたい、とか。
大倉さんは真っ直ぐで、ドキドキするような言葉を私に伝えてくれて。



でもまだ頭の中は章大さんの事でいっぱいで。
大倉さんになんて答えたらいいのか分からなくて。



「そんな風に言ってもらえて嬉しいです、ありがとう」



なるべく大倉さんに嫌な思いをさせないような言葉を選んで、部長に頼まれたコーヒーを持って逃げるように給湯室を出た。

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