恋味ドロップス(緑)

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大倉side



立ったまま給湯室の壁にもたれて。
Aちゃんが淹れてくれたコーヒーを飲もうとしたところで



「なるほどねぇ」



聞き覚えのある声がした。



「・・・マル。もしかして今の」

「や、わざとやないですよ？
たまたま話が聞こえたんで、つい最後まで」

「それをわざとって言うんやろ」

「いやぁ、それにしても大倉がねぇ。
Aさんに恋しちゃってるなんてねぇ」



はぁ、もう、僕がドキドキしてまいますやん！
なんて言いながら真っ赤な顔してマルが照れとる。



でも残念ながら。
Aちゃんはヤスが好きで。
オレの事はまったく眼中になくて。
そのうえ、無理やりキスしようとしたなんて。
(本当はキスするフリやけどさ)



マルが何を想像しとるのか知らんけど。
この先、ドキドキする展開なんかあるわけないやん。



「・・・で、前途多難な感じ？」

「はっきり言うなや」

「ライバルが章ちゃんやもんねぇ」

「言われんでも勝ち目がないことなんか分かっとるわ」



狭い給湯室に大きめサイズの男が2人。
並んでコーヒー飲みながら恋バナなんて。



「でも諦められないのが恋、ってね」

「・・・マル、まともな事も言えるんやな」

「そりゃ僕だって恋のひとつやふたつ！」

「３つ目の恋はないねんな」

「・・・・・」

「図星か」



いくら仲が良くてもヤスとこんな話は出来んから。
僕の話はどうでもええでしょ、ってまた照れるマルがおってくれて。



ちょっと救われた。

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