are you ready?4 【黒∞緑】

86.侯隆side ページ11

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侯隆side



しばらくモデルの仕事を入れんといて欲しいって
たつから事務所に連絡があったらしい。



Aの事で何かあったのは間違いないな。
オレのこと分かりやすいって言うてたけど
たつ、おまえも相当なもんやって。



さて……どうしたもんかな。



電話したら授業があるっていうから
大学の近くでメシでも食いながら話そかって事になった。



待ち合わせの場所に現れたのはせっかくの男前が
台無しになるくらい、疲れた顔のたつ。



「なんや、言うてみ？」



日替わりの生姜焼き定食を前にして、箸もつけないたつ。
それだけで重症やって分かるわ。



「よかーまくんやなかった」

「何が」

「Aちゃんが好きなん、よかーまくんやと思ってたけど違った。多分……オレの事、好きでいてくれとると思う」

「ノロケやったら聞かんわ」

「でも……ごめん、って言われた」

「え？おまえ、フラれたん？」

「……はっきり言わんといて」



ややこしいこと、なってんな。
まあ原因はAか。
あっちも事情聴取せなあかんかな。



「そんなん言われても諦めんのがおまえのええ所ちゃうの？」

「この間……我慢きかんくてキスしてもうて……
そん時、Aちゃん泣きそうな顔しとった。
オレがあんな顔させてると思ったら側におる自信なくなる」



この前の撮影。
A、ずっとそんな顔してたで？
たつの事を目で追うA。



逆やって。
好きすぎるとあんな……
切ない、愛しい目で見るんやな。
これは完敗や、って思ったけどな。



Aは不器用。
あれこれ考えすぎて、自分で抱え込もうとするのが悪い癖。



我慢しすぎるから自分の感情の出し方も下手。
頼って甘えてもっとワガママ言うたらええのにな。



Aも、たつも。
お互い好きすぎてすれ違ってるだけやって。



オレも、ヤスも気付いてるけど。
でもさすがに悔しいから、それは教えへん。



「Aは不器用やからな……
おまえが思うてんのと違うかもな」

「え、どういうこと？」

「それは教えへん。さて、Aを慰めてくるわ。
おまえがフラれたって事はオレにも可能性は残っとるわけやん？」

「ちょっ、よかーまくん！待ってって！」

「あ、昼メシごちそーさん」



慌てるたつに手を振って。
ヒントはやったんだから、昼メシくらいは安いもんやろ。



Aの事はもちろん好きやけど。
何だかんだ言ってオレ、手のかかる弟みたいな
たつの事も結構好きやで？

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