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「くそっ、変なことしたら殺すからな」
「しないよ。早く行かないと特売無くなるよ。」
悟がジャンケンに負けて買い出しに出るのをAちゃんと見届ければ、Aちゃんは私の服を少し引く。
見れば、1年前よりも伸びた身長、クオーターの血のせいか幼さが薄れた顔付きになっている。それでも変わらない丸い目をにこっと細める。
『傑くん、ありがとう。』
「ん?なにを?」
突然お礼を言われても身に覚えがない。
リビングに戻ってソファに座る。
『お願い聞いてくれて。』
「お願い・・・あぁ、あれのことか。私が言ったのを内緒にしててくれたらそれでいいよ。」
お願い、とはAちゃんが私にした事だ。
伏黒甚爾に攫われる前に私に全て聞きたいと言ってきたのだ。驚いたのはAちゃんが七海の書類を見て大体を把握していたこと、そしていつも見せる幼く、無垢な笑顔ではなく真剣な顔だったこと。
私が教えたのを内緒にする前提で知っていることを全て話した。そして、
「悟の為にも動くけどAちゃんの為にも私はいるから、上手く使って。」
そう教えた。
中々2人になる機会が減っていたから今になったのだろう。
「でも、伏黒甚爾を収めたのは驚いたよ。」
あれから伏黒甚爾は殺し屋を辞めて、悟にAの言うことなら聞いてやる。とだけ言い残したらしい。
「何か使ったの?」
『んー、とーじさんとお話ししただけだよ。今度恵くんに会えるの。初めて!』
「楽しみ?」
『うん!』
変わらない純粋で無垢な笑顔をする。それでも最近、ほんとうに時々、攫われて以来、Aちゃんは大人びた顔や雰囲気をする様になった。
悟や七海はそれに気付いていない。私が見たのは2、3回程度のこと。それがとても心配になっている。
「・・・・・Aちゃん」
『?』
手招きして膝に座らせる。出会った時より大きくなったとは言え、まだまだ小さい手を握る。
「七海や悟に話せないことがあったらいつでも聞くからね。」
うん。と深く大きく頷かれる。指を握ったり、離したり、指を合わせたり、黙ったまま少しだけ遊ぶとぴたっと手を止めて振り返ってぎゅっと抱き締められる。
小さな声でぽつぽつと、途切れ途切れに七海や悟、私も含めて怪我をし、血を流し、死ぬんじゃないかと思うとずっと怖かったと。
これからもそれが重なるのが怖いと、震える背を撫でながら言葉を静かに聞いた。
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とろろ芋太(プロフ) - シシマチさん» コメント返信遅くなってしまってすみません。更新ゆっくりですがよろしくお願いいたします。 (2021年7月15日 12時) (レス) id: ac729d71ae (このIDを非表示/違反報告)
シシマチ(プロフ) - ヤクザパロとかあんまり見ないのですが、とっても面白かったです!更新頑張ってください! (2021年7月7日 14時) (レス) id: 5733ebb1d6 (このIDを非表示/違反報告)
とろろ芋太(プロフ) - プスメラウィッチさん» コメントありがとうございます。まだ考えてませんが、頑張ります。よろしくお願いします! (2021年6月4日 19時) (レス) id: ac729d71ae (このIDを非表示/違反報告)
プスメラウィッチ - 初めまして、この小説は五条悟オチですか?できれば五条悟オチでお願い出来ますか?続き頑張って下さい。応援してます。 (2021年6月1日 10時) (レス) id: 8685377221 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:とろろ芋太 | 作成日時:2021年5月23日 10時