成長 ページ36
syp side
その後、ぼーっとしていると、長がこちらにやって来た。
『マーレと話したの？』
syp｢あ、はい。少しだけっすけど。｣
そう言うと、長は驚いたように言った。
『驚いたわ。マーレは必要最低限の人としか会話をしないの。それに、長く会話を続けることもないのに･･･。よっぽどショッピの事気に入ったみたいね。これからも仲良くしてあげて。』
syp｢もちろんっす。任せて下さい。｣
長から詳しく話を聞くと、マーレは人と関わりを自ら持とうとはせず、心を許した人としか関わらないそう。おまけに、口数が少なく、部下にもあまり温厚な態度ではないらしい。あれ、俺結構懐かれた？
『にしても、マーレも成長したわね。あの子、私が引き抜いた時は私にしか心を許さなかったのに、ショッピが来てから変わったわ。ありがとう。』
長は優しい声で俺に礼を告げた。
syp｢いえ、俺は特に何もしてないっすよ。でも、マーレが成長出来ているなら、それはそれで良いと思います。｣
『･･･マーレの事、呼び捨てにするなんて凄いわね。』
また驚いたように長は言う。マーレは他の卿以外に名前を呼ばれるのを酷く嫌うらしい。
『本当に凄いわ、ショッピ。貴方が来てから、本当にあの子は変わってきている。』
長はまるで、自分の子供を慈しむような雰囲気を纏って話していた。
syp｢そう言う長こそ、マーレや俺らの事、よく考えてくれてるじゃないっすか。まるで我が子の成長を見てるみたいに。｣
冗談っぽく言ったら、長はこちらを向いてこう言った。
『そうね、この国にいる私の部下達は、皆私の子供のように思っているわ。誰だって、子供の成長を見れるのは嬉しい事でしょう？』
夕日に照らされた長の黒髪が艶やかに輝く。俺はそんな姿に魅入ってしまえる程、長には言葉では言い表せない、不思議な魅力があると感じた。
syp｢･･･長には、いつまで経っても辿り着けそうにないっす。｣
『あら、そう？』
2人で笑い合いながら話していると、不意に先輩がへとへとになってこちらに来た。
kn｢お前ら･･･何の話、を･･･しとるん、や･･･！？｣
syp｢ただの世間話っすよ。それより汗臭いんでさっさと風呂入ってきて下さい。｣
もっと労われと言わんばかりの先輩を無視し、俺は与えられた部屋に向かう。きっと長はその光景をにこやかに見つめているのだろう。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：＊ | 作成日時：2020年9月8日 8時
