8 ページ9
阪神との強化試合。大谷のバッティングに圧倒されている自分のチーム陣を横目に如月はストレッチをしていた。同じチームだからと言って手を抜くつもりはない。
そんな如月の元に近本が足を運んだ。チラチラと視線は感じていたが、用があるならさっさとこれば良いのに。決してそんな事を言わず顔を上げれば、浮かない様子で如月を見つめていた。
「………何か用ですかぁ」
近本「大丈夫なん?」
「さぁ〜どうでしょうか」
近本「……あのなA。俺ら皆心配してんねんで」
「どうしてですか」
とぼけたようなその言葉に、近本は膝をついて如月の額をピンと指で弾いた。動きを止めて近本を見る如月の顔はまさに不満と言いたげだ。
近本「初めてのWBCで緊張しない奴なんかおるか」
「してませんよ、俺は」
近本の左腕を掴んで自身の心臓部分に当てさせる。近本は大層驚いた表情をしていた。
「すっごい阿呆面ですねぇ」
近本「……A、お前…」
「………なんですかその顔」
近本「…いや、こうしてAから俺に触れてくれるの、初めてやなぁって」
「!」
バッと手を放し如月はストレッチの続きをする。完全に無意識にやっていた行動に、如月は自分自身が腹立たしくて堪らなかった。
近本「可愛いとこあるやん、A」
「さっさと自分のベンチに戻ってくださいチカさん」
近本「分かった分かった。……手、抜くなよ」
「__誰に言ってるんですか」
試合で手を抜いた事なんか一遍もねぇよ、そう呟いた如月を見て近本は立ち上がる。どうやら杞憂だったようだ。自分を見ようとしない如月を見つめて近本は踵を返した。
森下「Aさんどうでしたか?」
近本「ん?大丈夫、いつも通りだったわ」
森下「流石だなぁAさん…」
640人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
キョンシー(プロフ) - 更新楽しみにしてます! (12月19日 8時) (レス) @page3 id: 84d2022181 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ