【呪術廻戦】狗巻と黛はすこぶる仲が悪い

参拾弐《11》 ページ33

『ごめん先生』

「！…ふー……帰ってきてくれてよかったよ」

「うわっ、Aさん！？」



術式を解くと

目の前には先生と悠仁がいた


多分、恵ちゃんがやらかした時に

私が暴れたら止められるように…かな


もう迷惑なんかかけないよ

暴走も、しないよ



そんなに心配して…いらないよ

そんな心配いらない



だってその心配、私に向けてじゃないでしょ



私が暴走したら殺してでも止める

けど、その後の喪失感を味わうのが怖いから


だから私を気にかける



「その人は？」

「おぉ釘崎、悪ぃなせっかく呼んだのに」

「ほんとよ、で？誰なのこの人」

「Aさん！2年生で、すげー強い人なんだって」

『君が残りの1年生か。挨拶が遅くなっちゃってごめんね、2年の黛A。名字以外ならなんて呼んでもいいよ』



男ばかりの1年生の中に一つの花か


かわいい子で嬉しいな

ちょっと私と一緒で気が強そうだけど



「A…さん？」

『うん、それでいいよ。君は釘崎なに？』

「野薔薇」

『野薔薇か…いよいよ花だな』



恵ちゃんといい悠仁といいこの子といい

恨めなさそうな子ばかり


棘以外にも嫌いなやつが出来たら

ストレスのはけ口にしてやろうと思ったのに


どんどんいい先輩になっちゃうじゃん



「…A、落ち着いたら僕んとこ」

『はぁーい』

「呼び出されてやんのー」

「おい虎杖、先輩だぞ」

「でもタメでいいって言われた」

『いーよ、最近は怒らなくなってきたし』



なんのことやらって？飛ばす2人と

複雑そうに眉を寄せる恵ちゃん


そっか、この中で私を怒らせちゃダメって

知ってるのは恵ちゃんだけか


面倒だし、特に説明はいらないか



『とにかく、迷惑かけちゃってごめんね。恵ちゃんも』

「いえ……大丈夫ですか」

『へーきだよ』



この子はちゃんと私と向き合おうとしてる


悠仁も野薔薇も

きっと私をちゃんと見てくれる



私だけが、やっぱりずるい

嘘つきで臆病者



「…Aさんはさ、なんで呪術師なろうって思ったの？」

「おい虎杖、詮索しようとすんな」

「なんで？先輩のこと知ろうとすんの、そんなにダメなことかな」

「ダメとかいいとかじゃねぇ、少しは慎重さを学べ」

『はいはいストップね』



なんで…か

なんでだろうね


本当になりたいと思ったことなんて

私にあったかな



『…私はただ、親に従ってるだけだよ。理由は特にない』



恨み、辛み

そして後悔で呪術師を目指す人が羨ましい

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