参拾参《12》 ページ34
「…Aさん、余計なお世話だったらごめんなんだけどさ」
『なぁに？』
「Aさんは確かに呪術師やることに自分の意思があるようには見えないんだけど、でも…なんも考えずに呪術師やってる訳でもないよね？」
『……まぁ、そうかもね』
悠仁はなんか不思議だ
他人がこういうことを言うもんなら
嫌味に思えて仕方ないのに
悠仁の口から出るそれには
一切の苛立ちさえ起きない
変に核心を突くようなことはしないで
優しく外堀を埋めるような
そんな心地のいい気持ち悪さ
「ならいいじゃんそれで。俺も自分でやりてぇ！って言い出したんじゃないし、呪術師やるのにそんなに過去って重要じゃないと思うんだ」
『…じゃあ、なんで悠仁は高専に来たの』
「それ学長にも聞かれた。俺にしかできないことなら俺がやるしかないじゃん。投げ出したら俺かっこ悪ぃしさ、自分のため。先輩も誰かのためじゃなくて、自分のためにやろうよ」
『…自分のためになんて…』
自分のためを思うなら
それならいっそ…
「嫌なら、やめていいじゃん」
『……やめらんないよ』
「Aさんのことなんだから、Aさんの好きにするべきだよ」
『私だけのことじゃない…』
「人に言われただけでしょ？その人にとって、Aさんが呪術師なのはそんなに重要？」
『重要』
「なんで？」
なんで…？
跡継ぎだから
歴代優秀な呪術師を排出してきた一家を
絶やしてはいけないから
「そこに多分Aさんの意思って入ってないよね。人が勝手に決めたことじゃん」
『それが私の道なの』
「違うよ、それはその人の道。よくある話、ピア二ストの母が子供にピアノを強要したことで、子供の本当の才能に気づけなかった」
『何が言いたいの』
「人の道を進むから苦しいんじゃない？外れてみたらさ、Aさんにも以外な才能あるかもしれないよ」
「…A先輩」
『……はぁ…なるほどね』
恵ちゃんのその辺にしてやれって顔で
言い返すのをやめた
思わずため息と苦笑いが出たけど
そういうことだ
悠仁なりに、慰めていたのだ
この私を
何をどう受けとってこういう話になったのか
よく分からないけど
私が何かしらに悩んでいると解釈して
余計なお世話をしてくれたらしい
「なんか違った？」
『んーん、ありがと』
きっと悠仁が思っているより
重たい話なんだけど
でもなんか、スッキリした
悠仁死なせたくなくなってきちゃった
.
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わらびもち - 主さんの文章力で夢主の心の闇がきっちりと表現されてる…。場面も分かりやすい…。すごい…。これからも頑張ってください！ (2021年1月16日 12時) (
レス) id: a494b1d180 (このIDを非表示/違反報告)
みかん - 更新頑張ってください！応援してます！ (2020年10月27日 21時) (レス) id: 495bc5f437 (このIDを非表示/違反報告)
きゃーぽん(プロフ) - 面白いです頑張ってください！ (2020年10月25日 11時) (レス) id: 0aee990b2e (このIDを非表示/違反報告)
絵描きさん(プロフ) - *瑠璃*さん» 良かったです！今後外れていなかった際はご報告頂けると嬉しいです…！ (2020年10月25日 1時) (レス) id: 215c832e11 (このIDを非表示/違反報告)
*瑠璃* - 絵描きさんさん» 大丈夫です！ちゃんと外れていますよ！ (2020年10月24日 11時) (レス) id: f48c22676e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：絵描きさん
| 作成日時：2020年10月19日 23時
