肆 ページ5
乙骨side
「…で、呼ばれたんですね」
「そういうこと」
「しゃけ」
「……はぁ…」
なんでこんなことばっかり…
喧嘩の仲裁役はもう何度目だろう
こんなことばっかりしてる気がする
Aちゃんは転入したばかりの僕を
あちこち案内してくれた優しい子だ
里香ちゃんのことも誰よりも理解してくれた
五条先生は僕に
愛ほど歪んだ呪いはないと言った
僕もそう思う
全てが愛による呪いのせいだった
でもAちゃんは言ったんだ
同時に愛ほど尊い呪いもないと
どんなに憎くても、恨んでいても
愛は決して消えることはないと
相手を呪うほどの愛があるのだと
「Aちゃん」
『…憂太…また入ってきたんだね』
「また頼まれちゃったからね」
『ごめんね…私いつも、憂太に迷惑かけてる』
「そんなことないよ、迷惑だなんて…一度だって思ったことない」
『憂太…』
「なに?」
『……"もっと入ってきて"、棘の奥底まで』
「あぁ、いいよ」
勝手にいいよと言わされるのも嫌いじゃない
ごめん里香ちゃん、浮気じゃないよ
ただ少し
心に触れるだけだから
『私、ここが大好きなの。帳が下りてないと不安で入れないけど、周りに私よりも強い人がいると安心できるの。変だよね、私強い人嫌いなのに』
「…変じゃないよ」
『五条先生はすごく安心できる。何より私の呪術を信頼してくれてるから、あの人には遠慮なく全てを見せられる』
「そうだね」
『…でも、私の棘へは入らない。私が入れないから。ここへ入れるのは、憂太だけ』
「……なんで入れてくれるの?」
『憂太には棘がないからだよ、心にね。私や五条先生にはある、だからあの人は入れないの。お互いの棘がお互いを刺して痛いから』
「…そっか」
だからいつも僕が喧嘩を止めるんだね
ここに閉じこもったAちゃんを
見つけられるんだね
それが、僕だけに許されたことなんだ
「…Aちゃん、おいでよ。表に戻ろう?五条先生も狗巻君も待ってる」
『棘…?棘は別に、私のことなんか見てないんだよ。私の呪言の術式をどう剥ぎ取るかしか見てない』
「え…?」
『なんでもない、そういえばお腹すいたかも。五条先生にご飯連れてってもらおっかな』
ここはAちゃんの心の中
拷問用の空間は
Aちゃんの心を閉じ込めるためのもの
棘だらけの心を押し込めた
Aちゃんの黒い部分
僕はそこにいるはずなのに
本心には、まだずっと遠い
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わらびもち - 主さんの文章力で夢主の心の闇がきっちりと表現されてる…。場面も分かりやすい…。すごい…。これからも頑張ってください! (2021年1月16日 12時) (レス) id: a494b1d180 (このIDを非表示/違反報告)
みかん - 更新頑張ってください!応援してます! (2020年10月27日 21時) (レス) id: 495bc5f437 (このIDを非表示/違反報告)
きゃーぽん(プロフ) - 面白いです頑張ってください! (2020年10月25日 11時) (レス) id: 0aee990b2e (このIDを非表示/違反報告)
絵描きさん(プロフ) - *瑠璃*さん» 良かったです!今後外れていなかった際はご報告頂けると嬉しいです…! (2020年10月25日 1時) (レス) id: 215c832e11 (このIDを非表示/違反報告)
*瑠璃* - 絵描きさんさん» 大丈夫です!ちゃんと外れていますよ! (2020年10月24日 11時) (レス) id: f48c22676e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:絵描きさん | 作成日時:2020年10月19日 23時