アッシュ・リンクスという男【BANANA FISH】

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『じゃあ…あの、お世話になります』

「はい。アッシュ！いいってさ！」


おっとりとした奥村さんがここまで

信用するならそういうことだ


この人達は、きっと根はいい人達なんだ


この状況じゃまともに生活も出来ないし


貫通してくれたから良かったけど

ちょっと神経を掠ったようで


止血の済んだ腕はろくに感覚がない


「あっ、そうだ…腕どうだい？動かすと痛い？病院行ける？」

『えっ、あっ…はい、もう痛みはそんなに…じんじんはしますけど』

「そう、良かった。これから伊部さん…あ、記者の人ね。が車で迎えに来てくれるみたいだから、来たら一緒に病院行こうか」

『はい…あの、ここの人達は車持ってないんですか？』

「うーん…みんな車よりバイクかな。バイクの方が良かった？」

『あっ、あ〜…車最高、私車大好き』


［奥村さんメモ］

割と笑顔でエグいこと言う無自覚S…っと


バイクなんてもろに風当たるもん

乗ってられるか


考えただけで痛い…


「おい日本娘」

「Aちゃんだよ」

「名前は聞いてない…お前1人で来たって言ったか？親はどうした」

「あ、えーっと…なんで1人なのかってことが知りたいみたい。親はどうしたの？」

『え、親…？は、えっと、うち共働きなので夏休み中も家族全員暇ってことがなくて…私は単にアメリカ行きたいっていう勢いだけで飛んできました』

「ご両親は仕事とかあるから1人で来たんだって。アメリカにちょっと興味あったみたい」

「へぇ…」


前も思ったけど


やっぱり奥村さんを挟んで会話をするのは

なんだか申し訳ないな


向こうの言葉も日本語に直さないと

いけないわけだし


英語得意って言ったって

こっちの育ちじゃないんだから


きっとすごく大変だよな…


「アッシュ、伊部が来たぞ」

「あぁ。…英二」

「あっ、うん！Aちゃん、車来たって。病院行くよ」

『は、はい』


連れられるようにアッシュと奥村さんの

後ろを引っ付き


数十分前に入ったばかりのそのバーを

出て少し歩くと一台の車が止まっていた


「やぁ、伊部っていうんだ。日本で記者をしている」

「自己紹介はいいから早く出してくれ」

「す、すまない…」


律儀に名乗ってくれた伊部さん？

を一括してアッシュが言った


アッシュは大人の人が嫌いなのかな？


どっちかと言うと優しいイメージ

だったんだけど…









うん。いいね、ギャップ

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