アッシュ・リンクスという男【BANANA FISH】

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それから


高校の後輩がいるって

意識しているのか


奥村さんは気を使うように

私のそばから離れなかった


その間アッシュは奥村さんから離れ

他のメンバーの人と話をしていた


奥村さんはアッシュのお気に入りなのかな

取っちゃったみたいで申し訳ない


「英二は伊部と取材で来たんだが、お前は1人で来たのか？」

「ここへは1人で来たのか、だって」

『あ、うん、そうだよ。私1人』

「1人だって」


などと奥村さんに通訳してもらわないと

他の人と話せない状況だ


こんなことならもっと英語勉強して

おけばよかった


『…………』

「？どうかした？」

『いや…』

「おい」


考え耽っていると突然声をかけられた


声の主はここのリーダー、アッシュだ

奥村さんに用かな


奥村さんがアッシュに近寄り

何やら話をしている


あぁ、やっぱり暇だな

奥村さんがいないと話せもしないし


英語か…奥村さんみたいに喋れたら

ちょっとかっこいいかも


なんて想像してニヤついていると

肩を叩かれた


奥村さんとアッシュが私を呼んでいる

ようだ


『なんですか？』

「アッシュが話があるらしい」

『え…』


怒られるんだろうか


勝手に怪我をして手当してもらって

奥村さんまで使いっ走りのような扱い


殺されたり、は…しないよね流石に


「……分かった」


アッシュからの言葉を受け取り

奥村さんが丁寧に日本語に訳す


「Aちゃん、嫌かもしれないけどしばらくここにいてくれないかな？」

『え……』

「アッシュもここの人も、みんな悪いと思ってるんだ。君に怪我を負わせたこと…まだ若くて、しかも女の子で…目立つところに傷跡が出来てしまうことになるだろ？本当にごめんね」

『いえそんな、私が自分から突っ込んで行ったんですし…』

「だとしてもだよ。それでなんだけど、アッシュが君の傷があらかた治るまでここにいていいって。もちろん、この後ちゃんと病院へも連れていくし、なるべく負担もかけないようにする。どうかな？」

『どうって…むしろいいんですか？だって私、ただの一般人ですし…』


さっき見ていた光景では

この人達はたくさんの人を傷つけていた


女だから優しくするなんて

そんな甘くないはずだ


「言っただろ？悪いと思ってるんだよ、口に出さないだけで。怪我をした君を手当だけして帰らすなんて、したくないんだ。こんなことしてる人間でもね」


そう笑う奥村さんは


誰よりもこの人達を

理解しているようだった

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