アッシュ・リンクスという男【BANANA FISH】

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しばらく奥に篭っていた

アッシュと奥村さんの帰りを待って


私はアレックスくんと話していた

英語はあんま分からないんだけどね


アレックスくん、顔ちょっと怖いけど

優しいんだよね


慣れない英語で話しかけても

少し笑いながら答えてくれる


「英二も最初そんなんだったよ」

『奥村さん？…あー、アレックスくんは…アッシュについて行きたいとか思わないの？』

「ん？あー、そうだな…しょっちゅう思うよ、ここにいる奴はあいつに憧れてついてきてんだ。当たり前のことさ」

『思う…？でも口には出さないよね』

「そりゃそうさ、あいつにはあいつなりのテリトリーがあるんだ。いくら同じグループの仲間でも、入っていいものとそうじゃないものがある」

『テリトリー？』

「そう。あいつにとっての地雷は、それこそ家族のことやゴルツィネのことさ。それにはいくら俺らでも立ち入れないところがある。あいつについてこいと言われない限りはな」


ゴルツィネ


慣れない単語の中に

その名前を見つけた


聞いたことの無い名前だが

アッシュと関係があるのか？


『アレックスくん、ゴルツィネって？』

「えっ」

「おいアレックス、余計なことは話すな」


背後から聞こえた声に

私もアレックスくんも肩を揺らした


振り返ると少々不機嫌なアッシュと

ルンルンな奥村さんがいた


『あ、ソーリー…』

「下手な英語はいいんだよ、生き残りたきゃ耳でも塞いで何も聞かないことだな」

『ん？えっと…パードゥン？』

「…はぁ、俺はまじでほっとくからな」

「まぁまぁ、そんなこと言わずに〜」

『…？』


なんだなんだ


早口だったし

ほんとに何言ってんのか分からんぞ


『あ、あの』

「あっ、Aちゃん！」

『はいっ…』

「アッシュがいいってさ、ついてきたかったらついてこいって」

『えっ…ほんとに？』

「本当だよ！あーでも、ちょっとまずいかも…」

『まずいって何がですか？』

「おい日本娘、ちょっと来い」


日本語の中に綺麗なネイティブの

英語が混ざる


そちらに顔を向けると

アッシュな手招きをして呼んでいた


奥村さんかと思ったが

呼んでいるのは私のようだ


『な、なんでしょう…？』


恐る恐るというように近寄って

そう聞くと


無愛想にあるものを私に差し出してきた


『………え、』

「自分の身は自分で守れ」




それは一つの


拳銃だった

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