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一郎さんは帰り際
「半分騙されたと思ってもいい。試しに正直にあいつに話してみろ。それで全部分かる」
そう言ってそそくさと帰っていった
早く帰ろうと思っていた俺の方が
その場に残されて
何分、何十分も立ちすくんでいた
話す…?話すって何を
まさか、俺が女だってことを?
冗談じゃない
今いる居場所を、自分から手放せって?
いくら左馬刻さんがいい人でも
大丈夫だなんて保証はどこにもない
そんな賭け事したくない
『…帰ろう』
ハッと気づいて動き出す
ご飯もお風呂の準備もしなくちゃ
こんなにゆっくりしている暇はない
余計なことは捨てよう
忙しくしていれば
嫌のことは思い出さない
『…た、だいま』
家に帰ってそう報告する行為には
まだ慣れない
元からあまりこういう習慣が
なかったせいだ
おまけに幽霊のように過ごした
中学、高校
ただいまは愚か
おかえりと返ってくることさえなかった
「おう、おかえり」
『すみません、遅くなって…』
それが今はしっかりおかえりと返ってくる
どんなに小さなただいまでも
この人は拾って帰りを出迎える
こんなに幸せで
これ以上の何を望む
「あー…今日イケブクロ行ったんだよな、一郎のやつと会ったのか?」
『え、あっはい…相変わらず元気そうでしたよ』
「あいつの様子はいいんだよ、風邪でもひいてた方がマシだしな。それより、なんの話してたんだ?俺の愚痴かなんかか?」
『と、とんでもないですよ…別に、大した話じゃないです。最近どうだとか、一郎さんの兄弟の話とか』
「あいつの兄弟って…あのそっくりなやつか、生意気なガキがいたな」
『会ったことあるんですか?』
「ん?あぁ、バトルの時にな」
上手く流せただろうか
左馬刻さんには隠さないと…
なんの話かなんて、そんなの言えない
俺が自立出来る年になって
恩を返して
完全に他人へ戻るまで
絶対に知られないようにするんだ
『あっ、そうだ。まだご飯もお風呂の支度もしてなくて…もう少し待っててもらって』
「必要ねぇよ」
『え…?』
「風呂は俺が用意したし、飯なら今日銃兎…あー、知り合いから押し付けられたもんがあるから」
冷蔵庫からその料理を出しながら
せっせと動く左馬刻さん
なんか、用意がいいな…
気のせいか?
とりあえず助かった
その時の俺は深く考えていなかった
このあとのことを
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絵描きさん(プロフ) - ぺらさん» 分かる(´-ω-`) 左馬刻様をもっと普及させるためにも頑張ります〜 (2018年12月9日 0時) (レス) id: 2c9b4e9ca8 (このIDを非表示/違反報告)
ぺら(プロフ) - もう、推しが尊い (2018年12月5日 5時) (レス) id: 30c81c3732 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:絵描きさん | 作成日時:2018年10月18日 14時