俺の父さんは歌い手【そらる】

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「また断ったの？先輩、普通に可愛かったじゃん」

『…お前なぁ、俺は顔で決めたくないって前から言ってるだろ。それに俺には…』

「あーはいはい、知ってるよ！ったく…ファザコン野郎」

『うるさいブラコン娘』


あの先輩は俺は女の子と話さないとか

決めつけてきたけど


別に話さないわけじゃないし

女友達がいないわけでもない


特にこいつ、同じクラスの大宮千夏とは

それなりの仲だと思ってる


『お前の方はどうなの？お兄さんと』

「んー？普通だよ、今まで通り」


接してきた中で分かった

こいつは俺と同類


俺は父さんが好きだけど

こいつは実の兄が好きだという


俺と似てることろが多くて仲良くなった


唯一違うことろは、こいつはまだ

お兄さんと関係を持ってないってことだ


「んで？そう聞いてきたってことは何かあったんでしょ？なに？」

『いや、大したことじゃないけど…』

「ん？」

『……仕事仲間…と言うかユニットの相方？にも俺のこと言ってないらしいんだ、父さん』

「あぁ、えっと…まふまふさん？」

『そう』


昨日いきなり家にきたあの人は

父さんの活動するユニットの相方さん


長い付き合いの友達で

こないだやった武道館ライブもそのユニット

のだった


俺の知らない父さんを知ってる人


『…まぁ、言えないのも分かる。結婚してない、彼女もいないって状況で子供がいるのはおかしいから』

「うーん、私の家系はそんなにややこしくないし、普通だからなんとも言えないけど…やっぱり言いたくないんじゃないかな？それとも知られたくないとか…」

『知られたくない…』

「もしもの話！あんたのお父さんのことだから、どこから情報が漏れて自分のファンに伝わるか分からないし、警戒してるだけだよ」

『……あぁ』


けどもし、俺の存在を知られたくないって

ことだとしたら…


俺はいない方が、父さんは困らない


『……難しいな…』


ーーーーーーーーーーーーーーー


「ふーん、また告られたんだ？」

『ちゃんと断ったよ』


ソファに寝そべる俺に

膝枕をする父さん


一人で座っててもいつの間にか

抱え込まれてたり抱きしめられていたりする


言うなればひっつき虫


『父さんも誰かの告白断ったことあるの？』

「そりゃあるよ…俺が付き合ったのは母さんだけだったからね。後は全部断っちゃった」

『……へぇ…』


俺のこと邪魔じゃない？

言おうとしてやめた


俺のこと隠す理由

何となく分かった気がする

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