魔と人間のハーフの子(3) (ページ30)

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『ただいま戻り…』

長尾「おっかえりー」

『………』

研究室に入ると案の定ソイツはいた

来客用のソファーに座り優雅に珈琲を飲んでいやがる

長尾「どうだったよ新人は」

『どうもこうも………お前分かってただろ』

長尾「なーんのとこだか？」

『はぁ……で？なんの用さ』

長尾「ん？だからその新人だよ、どうだった？」

一概にどうだったと聞かれても…

まぁ…率直に言えば…

『根性はあったよ、先に進めるかって聞いたら「行きます」ってさ………ま、向いてるかは別として』

長尾「あー、なるほどなぁ」

『女の祓魔師は珍しくない、でも私はあの子が上手くできるとは思えない』

長尾「……」

私がこう言うことを多分コイツは分かっている

分かっていてなお、私に聞いてきた

『ま、育てる育てないはそっち次第、私は知らん』

長尾「え〜咲耶ちゃんつめたーい」

『当たり前です、元より私は祓魔師じゃないんですから』

長尾「でも少しは情があるだろ？」

『どうだかね』

情…情ね……

少なくとも、逝かれたら後味悪いぐらいには移ったかな

『長尾、なんで私にあの子を寄こした』

長尾「まぁ、アイツを死なせねぇ為ってのもあるけど…」

『もし同情なら、私はお前を殴って縁を切る』

長尾「話聞けっての、別にアイツの代わりにしようとした訳じゃねぇよ」

『そう』

長尾「ったく……アイツの兄貴、まぁ俺の同僚に頼まれたんだよ、「月尾田咲耶を同行させてくれ」ってさ」

『フーン』

なるほど妹思いの良い兄じゃないか

まぁ、そこまで大切ならそもそも祓魔師にするなって話だけど

祓魔師は戦う事が仕事だし

いつ死んでもおかしくないってのに

『兄妹愛ねぇ…皮肉なもんだ、そのせいでどっちかは確実に先に死ぬってのに』

長尾「咲耶、縁起でもねぇこと言うな」

『事実だよ』

長尾「お前なぁ」

『とにかく、その同僚の人に言っといてや、大事なら自分で守れってさ』

長尾「ヘイヘイ、んじゃ俺行くわ」

『ん、今日の夕飯麺だから早く来てね』

長尾「りょーかい」

景はソファーから立ち上がると

長い髪を背で揺らし

片手を頭の横でヒラヒラとさせて去っていった

大切な人、かけがえのないもの

そんなもの自分で守ればいい

後で自分を責めるくらいなら、それの為に死んだ方がマシだ

まぁでも、私の場合守んなくてもいいくらいだけど