48.距離 ページ48
Aside
黎弥の手際の良さに見とれながら、テレビがやっと設置出来たことにテンションが上がる
隣を見れば無意識に私から近寄ってたのか距離がめちゃくちゃ近く、私の顔をジーッと見つめる黎弥
黎「……Aって、夏輝くんが家に来た時もこんな感じなの?」
まただ。どこかで聞かれたことのあるセリフ
「こんな感じって…?」
黎「夏輝くんともこの距離感?」
眉をひそめながら、そう聞いてきた
近くに行っちゃってたのは無意識だったけど、嫌だったのかな
そう思った
「……近すぎたよねごめん」
正座のまま後退りをして、距離を取る
黎「事務所で初めて会った時も思ってたけど、いっつも夏輝くんと近いよね」
「それは、夏輝くんの距離感がバグってるんだよ」
黎「なにそれ…本当に付き合ってないの?」
「夏輝くんと私が?なんで今更そんな事聞くの?絶対ないよ」
黎「……傍から見たらそう見えるくらいの距離感じゃん。付き合ってもないのにいい歳した男女がお泊まりとか有り得ないでしょ。」
言葉に詰まって何も言えなかった。
今まで何も思わなかったけど、考えてみればそうかもしれない
だけど……
「なんか、怒ってる?」
黎「……いや、怒ってるっていうか。Aの危機感の無さに困惑してる」
危機感?夏輝くんに危機感を持つってこと?
「危機感……でも夏輝くんは兄妹みたいなもんだし」
黎「Aはそう思ってても、夏輝くんはそうは思ってないよ」
「なんで言いきれるの?」
さすがに私もイラッときた
黎「夏輝くんも男だからだよ」
「男だとしても、私は夏輝くんだけを信用してる。夏輝くんのこと憶測だけで悪く言わないでよ。」
黎「別に悪くは言ってねえだろ、Aが危機感持てって話。てか夏輝くんだけを信用してるって、じゃあ俺の事も信用できない?」
「危機感危機感って、彼氏でもないくせになんなの?初めて会った時から半年も経ってないのに信用とか出来るわけないじゃん!!」
うそ。本当は信用してたし信頼してた。
だけど、口喧嘩がヒートアップして思ってもないことを口走ってしまったのだ。
黎「なんだよそれ……じゃあ簡単に信用してない奴を家に上がらせんなよ。帰るわ」
ため息をつきながら立ち上がった黎弥はそのまま玄関へ向かった
ガチャン
扉が閉まる音が聞こえた瞬間、涙が零れた
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作者名:まここここ | 作成日時:2023年5月27日 23時