寮分け ページ24
うそ。
言葉が出ない。
信じられないという気持ちの後に嬉しさが後を追って押し寄せてくる。しかしその流れに身を任せることは出来なかった。今の自分の姿を考えれば、納得する話。
(私今、男だ.......)
バラしたら、いいのではないだろうか。
彼の前で、元の姿に戻り、私だと伝えれば。
そんなねじれた感情が心を蹂躙した。
しかしあることに気がつき、少しの期待が打ち砕かれる。
あの日、最後となったあの日の姿だ。
死んだ私はそのままこっちの世界へと飛ばされた。
でも、おかしいのだ。それなら、何故彼はこんなにも成長しているのか。時間軸の辻褄が合わない。
パラレルワールドと言われる類のもので、私が会ったフロイドとは違うフロイドなら、私の事なんてそもそも知らないはずだ。
もし、私の会ったフロイドならば、そもそも覚えているのかが怪しい。3歳から16歳の間で、私のことを忘れていたって何らおかしくない。記憶自体が何らかの作用により消されていたとしてもおかしくないのだ。
そもそも、最後があんなお別れだ。
忘れていて、私の姿を見て思い出すようなことがあれば。
思い出して欲しいという、私の身勝手でトラウマを増やすだけじゃないのか。
それなら、思い出してもらうメリットなんて.......
そんな結論が出そうになった時、私の番が来たので鏡の前へ立つ。名前を告げ鏡の言葉を待つ。
私の事だが、そもそもどこの寮にも所属しないのは鏡と先生方の中では把握済み。
よって、それっぽい理由を鏡にペラペラと話すよう予め伝え、一旦保留になるよう学園長が仕込んでいた。
保留?
なんか凄いな
こんな事ってあんだな
と一瞬ざわついたが、次の新入生が鏡の前に立つと自然と雑音は落ち着いて言った。
寮分けされ、各寮長の元へ集合する新入生。
寮に繋がる鏡を通り抜け、これから自身の帰る場所となる寮へと帰っていった。
だだっ広い講堂は、私と先生たち、そして鏡だけとなる。
「鏡さん、ありがとね」
「これくらい、なんてことない」
「私さ、元の世界では学校嫌いだったんだよねェ。
でも、こっちの世界に来てパパと出会って、とっても幸せ。やから、パパが校長を務めてるこのカレッジを全力で楽しんで、その姿を見せてあげる事が、まず最初にできる恩返しかな〜って。」
「ンニ”ャ〜お」
「おっ!ルチウス。今日も綺麗な毛並みしてんな。
トレイン先生にブラッシングして貰ってるのか?」
「ミャァ」
足元に擦り寄ってくる可愛い猫を抱き上げる。
よくフロイドも足につかまってたなぁ、と思い出して少し寂しくなった。
そんな時だ。
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Ria*(プロフ) - すみませんごめんなさい…。前にしたコメントゆっこさんのことを呼び捨てに…!!わざとじゃないんです、ごめなさい!ゆっこ"さん"です!訂正させてください!! (2020年8月6日 10時) (レス) id: 33e95337be (このIDを非表示/違反報告)
白玉の星(プロフ) - 速く………………速く………………思い出してほしい…これからも頑張ってください……………… (2020年8月5日 21時) (レス) id: 897ea2c55e (このIDを非表示/違反報告)
ちぃすけ。(プロフ) - 全編見たとき泣きました…( ; ; )この作品が今までで一番好きです!!更新ものすごく楽しみにしてます!!頑張ってください! (2020年8月5日 20時) (レス) id: 0f6c0c9d97 (このIDを非表示/違反報告)
Ria*(プロフ) - 続編心待ちにしてました!ゆっこの作品大好きです!これからも楽しみにしています!! (2020年8月5日 18時) (レス) id: 33e95337be (このIDを非表示/違反報告)
蜜柑 - 名前変換させてほしい… (2020年8月5日 12時) (レス) id: ed99c8170d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ゆっこ | 作者ホームページ:https://www.pixiv.net/novel/series/1297564
作成日時:2020年8月4日 20時