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夏の或る日2 ページ4

菓子楊枝で水まんじゅうに切り込みを入れ、それに刃をぶすりと入れる。

それを口の中に入れ、ゆっくりと噛むと優しい甘さとひんやりとした食感が口の中を埋め尽くしていく。

「美味しい。」

もう一度切り込みを入れ、口にほおりこんだ時だった。

福本が閉めていった筈の扉がゆっくりと開き、誰かが中に入ってくる。

私は水まんじゅうを噛みながら扉をじっと見つめる。

「ああ、なんだ碓氷か。」

「三好。」

入ってきたのは寝ぼけ眼の三好だった。

先程まで寝ていたのだろうか、いつもきっちりしている筈の服装は少しだらりとしていた。

いつも気にしている前髪だけは綺麗だ。

「珍しいね、碓氷が髪を束ねてるなんて。」

「暑いから、福本に束ねてもらった。」

「そう。」

三好は冷蔵庫を開けると麦茶を取り出し、ガラスのコップにとぷとぷと注ぎ込む。

「三好は寝てたの?」

「ああ、本当ならもうちょっと寝るつもりだったんだけどこの暑さじゃ」

そこまで言うと三好は言葉を止めた。

満杯になったコップから滝のように麦茶がこぼれ落ちる音が耳に響く。

思わず後ろを振り向いた。

「三好?」

「碓氷。」

三好は麦茶の瓶を強く台所に置くと、ずんずんと私のほうへ近づいてくる。

「みよ」

「この首の跡、誰につけられた?」

「えっ?」

「甘利か?いや、それだったら福本が締めてるな…。
実井か?それとも…」

「三好、何のこと?」

そう言って首を傾げると、三好がガッと私の肩を掴んだ。

「キスマークのことだよっ!」

「………きすまぁく?」

聞いたことのない単語だった。

キスくらいは分かるがそれがマークになるというのは一体全体どういうことだ。

「きすまぁくがなにか分からないけど、この首の赤いのは蚊に噛まれただけだよ。」

「は?」

「昨日部屋に蚊が居てね、噛まれちゃったんだ。
今は痒くないけど。」

「蚊、ですか。」

「うん。」

私は頷く。

「本当の、本当に蚊なんですね?」

「うん。」

そう言い終えると、三好はしばらく固まった。

何分くらい経ったのだろうか、ぽかんとしたまま私の顔を見つめていたかと思うと急に顔が高くなってしまった。

「三好。」

「さっきのは忘れてください!あと、キスマークの事は甘利にでも聞いたらいいでしょう!きっと丁寧に教えてくれますから!」

そう言い終えると、三好は真っ赤な顔を隠しながら食堂を飛び出してしまった。


「…麦茶、忘れてる。」

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きさひろ(プロフ) - inaさん» リクエストありがとうございます…!遅くなるかもしれませんが今のお話が終わったら書きたいと思います! (2016年8月29日 22時) (レス) id: a27f79ed81 (このIDを非表示/違反報告)
ina(プロフ) - リクエストで若中佐との恋愛話とD機関が吸血設定が読みたいです…!!いつも楽しみに読ませてもらってます!これからも次回の作品など楽しみにしてます! (2016年8月29日 21時) (レス) id: 6adabf3002 (このIDを非表示/違反報告)
サンタ - リクエスト答えてくださってありがとうございます!きさひろさんの作品好きです!これからもがんばってください!碓氷が尊い (2016年8月23日 22時) (レス) id: a382114b2a (このIDを非表示/違反報告)
きさひろ(プロフ) - サンタさん» あああありがとうございます…!前作にもコメントしてくださって…!本当にありがとうございます!警察パロゆっくり書いていきますね…! (2016年8月21日 23時) (レス) id: a27f79ed81 (このIDを非表示/違反報告)
サンタ - 三好との絡みが好きです!警察パロもみてみたいです。 (2016年8月21日 22時) (レス) id: a382114b2a (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:きさひろ | 作成日時:2016年8月17日 23時

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