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トラゾーがそう言った瞬間、ものすごい風と音が肌から伝わる。とにかく速かった、速いのはいいが風圧が強くて少し苦しかったのを覚えている。
そう我慢してるうちにあっという間に医務室着いてしまった。
「コンタミさん!腕持ってきましたよ」
「あ、ありがとう〜」
トラゾーに呼び掛けられ振り返る。吸い込まれるような黒色の宝石の彼は、オニキスで医師のコンタミという宝石だ。
とても手先が器用で、割れてもすぐに治しちゃう。ちょっとマッドだけど。
「これ、新しい腕。」
「ブルートパーズかぁ…これはいいね。じゃ、らっだぁ腕出して。仮留めするから。」
俺は担いでいたらっだぁをベッドに座らせる。
意外とすんなりと腕ははまり、インクルージョンも拒否反応を示さなかった。
「おー…なんか不思議な感じ〜」
「まだ動かせないけどね。削っていくよ〜」
「げ…優しく削ってよ…」
ガリ、ガリとあまり耳に優しくない音が医務室を響く。
さすが医師。あっという間に両腕は本来の太さと長さに元通りになってしまった。
「らっだぁ、腕は動く?」
「いや…なんか全く動かないんだが?」
「まぁ、インクルージョンが慣れるまで時間はかかるから。外行って、光食べればすぐに動くでしょ」
「テキトーすぎ!」
「そんなもんだよ。あ!ぺいんとさん」
「なんですか?」
「らっだぁのリハビリ付き添ってくれない?これから報告しないとダメだから」
「分かりました!」
「じゃ、俺も用事あるから!」
そう言ってコンタミさんとトラゾーは医務室を後にした。
残されたのはらっだぁと俺二人だけ。何故か目を合わしずらくて困っている…話そうにも話せない…
「ぺいんと?」
「なに…」
「元気ない?」
「そう…」
「どうして?」
「…」
無言でらっだぁの腕を指さす。二人いるのに、サポート出来ずに腕を取られたのが、悔しくて情けなかった。
それを怒られなかったのも、悔しかった。
「…らっだぁの腕、動いてさ、戦えるようになったら、俺ももっと頑張るから…だから…」
「ぺんちゃんは充分頑張ってるよ〜。おれも寝起きだったし、油断してた。ぺいんとは悪くない」
やっぱり、怒られない。慰められるだけだった。
優しいのにこんなにも温かいのに、胸の奥はキリキリと割れそうなほど痛い。優しさが辛かった。
「おれも腕動かせるよう頑張るから」
「うん…」
そう言われ肩を叩かれる。やっぱり冷たかったがどこか暖かかった。新しい腕だけど変わらなかった。
「あれ、らっだぁ…」
「…動いたぁ!」

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作者名:匿名 | 作成日時:2022年12月18日 18時

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