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医務室に居たのは白粉を塗っている最中の､透明でとても綺麗な宝石の子だった｡もしかして、この子が流氷係？
でも､こんな子見たことがない｡一体誰だろう？
｢先生とトラゾー以外話したのは初めて｡みんな冬眠してるからね｣
｢そうなん､ですか？｣
｢そうだよ､多分名前も知らないよね｡俺はアンタークチサイト､クロノアって呼んでね｡｣
そう彼は白粉を塗りながら言った｡一体どんな子なんだろう？でも、春の間は彼を一度も見たことないし、声も聞いたことがない｡
｢クロノア､さん？えっと…俺、春の間あなたを一度も見たことないんですけど…｣
｢俺はね､少し特殊でさ、冬の間は寒いからこうやって動けるんだけど春は液体になってるんだよ｡｣
｢へぇ…それで、冬の間はなにをやってるんですか？」
｢流氷を割ってるよ､皆を起こさないようにね｡｣
彼は自分達とは違う、真っ白な制服を着ながらそう言った｡
皆を起こさないように？どういう事だろうか｡
初めてみるクロノアさんを見て、より興味が湧いてしまう｡
｢え？どういうことですか？｣
｢うーん…説明するより見た方が早いかも｡じゃあ、辛いと思うけど興味があるならついてきて｡｣
そう言ってクロノアさんは､トラゾーとはまた違う斧を持って歩いていった｡正直光が薄くて動きにくいのが身に染みてわかるが､興味が勝ってしまいついていくことにした｡
｢う…全然…やばいかも…｣
｢あとちょっとだから､頑張って｡｣
雪に足が取られ､ただでさえ動きにくいのに、光が夏よりも格段に薄くなっていてもう一歩歩いただけで疲れてしまう｡
そんな中､必死に地面に這いつくばいながら歩いていると、地面が氷でできた歩いてきた場所とは違うところにきた｡
｢着いたよ｣
｢ここは…？｣
｢海だよ｡海が凍ってこんな感じになってるの｣
｢此処がクロノアさんの仕事場？ですか？｣
｢そう｡…もうすぐ来るかも｡｣
そうクロノアさんが呟いた途端、奥の流氷が周りの流氷と擦り合わせるように動き、ギィィィ､と叫び声の様な嫌な音が聞こえた｡それに続いてギィィィ､ギィィィと音は大きくなっていき、耳を塞いでもはっきりと聞こえるくらいになっていき、体と地面を揺らすほどに音圧が伝わってくるようになっていた｡
｢なに…？これ…｣
｢流氷と流氷が擦り合ってなる音だよ｡この音が皆を起こしてしまうから､それを砕く仕事をしてる｡それが流氷係｡｣
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作者名：匿名 | 作成日時：2022年12月18日 18時
