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少年が少女のお守りをしてから萩原朔太郎は週に一度しか家に帰って来なかった。
それから少女と少年は来る日も、来る日も遊び続けた。
気づけば少女は7歳。少年は10歳にまでなっていた。
『ねぇ治さん!遊ぼう!!』
「いいよ。」
少年は少女と遊ぶのに慣れるまでそう長くはなかった。少女は物覚えが早く、少し難しい言葉を使ってもすぐに飲み込み、翌日には使いこなせていたのだ。
それは少年にとってはとても愉快な事で楽しかったのだ。
『じゃあ今日はお嫁さんごっこしよう!』
「お嫁さんごっこ?何だいそれは、」
少年は聞いた事のない遊びで少し戸惑った。
『私がお嫁さんで治さんがその相手!』
「別にいいけど、良いのかい?僕で。こう言う手の遊びは好きな人とやるものだけど」
少年が言うと少女は首をブンブンと振った。
『私は治さん好きだよ!お父様よりも沢山遊んでくれるし、色んなこと教えてくれるもん!』
この微笑ましい言葉に少年は幼いながら少女に父性を感じた。
母性よりも父親としての存在の方が強いのだろう。
「ありがとう。僕もAのこと大好きだよ。」
『本当?じゃあ私治さんと結婚する!』
すると少年は苦笑して言った。
「それは嬉しいけど、Aにはもっと良い人がいると思うけどね。」
『えぇ!じゃあ結婚してくれないの?!』
『ずっと僕のことを好きでいてくれれば僕もAと結婚したいな。
Aはきっと良いお嫁さんになれる。』
すると少女は目をキラキラと光らせ大きな声で返事をした。
この時少年は思った。ずっとずっと彼女とこうしていたい。彼女の成長と共に自分も老いていきたい。
少年は少女と遊んでいる時だけ、自分の存在主義や、この世界がつまらなくなる事、自 殺しようとする願望が一切消えた。
少年にとって少女は生きる希望だった。
その時だけ、自分が生きていると確信できる気がしたから。
だが、その幸せな空間が永遠にあるとは限らなかった。少女が12際になると同時に、少年にも変化が訪れた。
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かるーあ(プロフ) - 初レス失礼します。いつも愛読させて頂いてます。スランプとか、やっぱりありますよね!私も一応作者なので解ります‼︎応援しながらのんびり更新待ってますね^^どうかご無理だけはなさらず! (8月7日 18時) (レス) @page20 id: 33aaf0fec0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:朝はパン派 | 作成日時:2023年7月3日 5時