双子vs双子【宮侑】

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「おはよ」

「おはよう、宮くん」

　稲荷崎(ここ)に来て1ヶ月。
　わたしは、未だに馴染めていない。

　呑気に話しかけてくる隣のイケメンをジロリと見る。

　わたしに友達が出来ないのはこいつのせいでもあることを、わたし自身が一番よく分かっている。
　なのに話すことも止められないのは、友達がこいつだけだからである。

「はぁ…………」

「何ため息ついとんねん」

「あんたが一番よく分かってるでしょうがよ……。
　胸に手を当てて聞いてみなさいよ……」

　転校初日、あろうことかこいつはわたしを口説いたのである。

＊

『あんた綺麗な顔しとんなぁ……。
　見ぃひん顔やけど転校生か？』

『あっ……そう！そうなの！転校してきたんだ』

　友達もいなくて、緊張していたわたしに話しかけてきたのがこの男、宮侑である。

　当時は天使だと思った。イケメンで、背も高くて、何より友達がいないわたしに話しかけてくれた人は初めてだったから。

　けれど、次の瞬間勘違いだったと知らされた。

『せや、俺と付き合わん？
　俺、イケメンだし良い提案だと思うけど』

　きゃあ、と上がった悲鳴。
　ぶりっ子、と囁かれた言葉。

『えっ、遠慮させていただきます！！』

　そう、わたしは女子を敵に回してしまったのである。

＊

(断ったのに……！)

　分かっている。

　女子にとっては、断ったかなんて関係ない。
　あの宮侑に見初められたということが重要なのだと。