68、潤いのある声の話 ページ28
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ぐらりと体が傾いたかと思うと、今度は雄叫びをあげ春野に襲いかかった
春野が悲鳴をあげる
即座に間に割り込み、久遠の鞘を敦の腹に向けてバットの如く横向き振る。敦はうめき声をあげてくの字に吹っ飛び、列車に背中を強打した
「すごーい!」と長椅子に腰掛け楽しそうな子供を他所に、声を張り上げる
『お二人とも、早く何処かに隠れてください!』
おそらくというか確実に敦の変化は、子供の異能力によるものだろう。実際、人形が頭を割いてから明らかに様子が変わった
背中を強打しようとも、敦は立ち上がりAを強く睨みつけた
素早く思考を巡らせ、この現状をどう打開するか思いつく限り考える
『何とか、、、』
____A
透き通るような艶々と潤いのある声が響く。思考が一瞬で吹き飛んだ
これは駄目だ
____A
もう一度名前を呼ばれる。霞んだ視界が晴れ名前を呼んだ人物がはっきりと見えた
『、、、、、、母様』
目の前に、着物に身を包んだ華が具現化したような、美しい容姿で堂々と佇む女性もとい母様がいた
にこりともせず、唯々Aを見据えている
『、、、、、、』
Aは疾走した
列車を背に立つ母との距離が徐々に縮まっていく
だがAは速度を落とさない
このままの勢いでは激しくぶつかってしまう。かと思われたが、その体と衝突することはなく、煙のようにすり抜けた
結局は、全部異能がみせた幻覚なのだ
体をすり抜けた先には、敦もAに向けて疾走しているのが見えた。元から其方が目的で走っていたのだ
「どうして、一緒に来てくれなかったの」
この言葉に、なんと返せと云うのだ
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作者名:瑠風 | 作成日時:2022年5月10日 3時