“嘘つき”は神に祈る Ⅲ (ページ29)

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叩き潰しページ29

鳴り響く爆発音に耳を傾け続けたAは、去っていったMr.5とバレンタイン、そして彼らに囚われたビビの背中を見届けると、軽く飛び降りるように地面へ着地した。

『おーい、生きてっか？』

「……なんで……ｹﾞﾎｯ助けなかった」

『なんでって……なあ？』

　Aは屈むと、な？わかるだろ？というような目で両手を軽く動かす。
　ビビの「Aさん!!!」という悲鳴は聞こえていたが、殺されないのなら構わないだろうというAの思考は、ルフィには手に取るようにわかった。そして、睨みを強める理由にもなった。

『そんな目で見るなよ』

「……お前なら勝てた」

『馬鹿言え、聞いたろ？ロロノアも捕まったんだ。おれが勝てると思うか？それにおれはお前が心配だったんだよ。このまま埋まって野垂れ死んだらどうしよう、そう心配するおれの気持ちに涙ぐらい流してくれよ』

「……」

　へらへらと戯けるAに、ルフィは呆れた顔でウソップを見た。血を流し、体はボロボロな彼は意識を保つのがやっとなのか、ふざけたセリフを吐いたAを見ているだけだ。

　そんな二人の視線に負けたのか、しゃーねェなァと呟くと、ルフィを引っ張りだそうと地面を掘り起こす。

「A、おれは許せねェ……!!!」

『……』

「おれもだ!!! ルフィ……!!!!」

『そうかい、そりゃ大変だな』

　ルフィを掘り起こしたAは、途中で目を覚ましたカルーがウソップと同じ目をしていることに気がつくと、呆れた顔で目を逸らした。

　ばっと立ち上がったルフィとウソップは、土だらけで全身火薬まみれの体を奮わせる。

「よし……!! じゃあ、4人で行くかっ!! あいつら叩き潰しに……!!」

『ルフィくん!? おじさん一言もやるって言ってないんだけど!!』

「ビビが死んでもいいのか？」

『ぐっ、それは困る……』

　王女の命＝金。
　完璧な方程式が頭の中で出来上がってしまったAは、渋々ルフィ達の背中を追った。

　＊

　“絶体絶命”。
　ドルドルの実のろうそく(キャンドル)人間であるMr.3の手にかかったゾロ、ナミ、ビビ、そして見事罠にはめられたブロギーは、今まさに芸術品として蝋に包まれている最中だった。

「足、切り落としゃあおれは動ける。一緒に、こいつら潰さねェか？」

　蝋によって足を拘束された三人と体の半分を蝋に覆い尽くされた巨人は、大人しく蝋人形にされる未来を見るばかりだった。