“嘘つき”は神に祈る Ⅲ (ページ45)

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覇国ページ45

育ちも育ったり怪物金魚。またの名を“島食い”。
　驚くなかれ、こいつが巨大なのは体だけではない。目に見えた島を食いつぶした結果、消化されて出されるフンのデカさと長さは、あまりの大きさに“何もない島”という名がつけられるほどだった。

「懐かしい冒険の日よ」

「奴らを見ているとどうも昔を思い出す……!!」

　どこかで聞いた思い出話に花を咲かせながら、2人は飲み込まれるメリー号を確認すると相棒(ブキ)を構えた。強く握られた剣と斧は、悲鳴をあげながらも友を想う2人の気持ちに答える。

　胃の中で「まっすぐ……まっすぐ!!」「まっすぐ!! まっすぐ!!!」と叫ぶルフィとウソップの声は、2人の巨人を信じていた。

　当然だ。彼らはエルバフの戦士なのだ。信じる理由など、それだけで十分だろう。

「「“覇国”っ！！！！」」

　そして、彼らは戦士である前に“友”である。

　友の出航を祝うように島食いもとい怪物金魚の腹を突っ切った波動は、メリー号を海へと飛ばす。

『こりゃスゲー……夢みてェだ!!』

　波を立ててメリー号が海へ着水する。
　背後から聞こえる2人の巨人のエールと笑い声に背中を押されたメリー号は、振り返ることなく海を進む。

　目的地はアラバスタ。
　エルバフの戦士の思いを胸に、麦わらの一味は王女様を乗せて一直線へと海を切った──

　＊

「2603……!! 2604……!!」

『頑張るなァ……てかそれどこで売ってんだ』

　巨人島・リトルガーデンを出た船にて、Aは目の前で汗水を振りまくゾロに欠伸混じりに呟いた。

　まだ足の痛みが引いていないというのに修行と称して100kgの巨大ダンベルを振るゾロは、蝋すら斬れない己の柔さを恨んでいた。

「強く……ならにゃあ……ならねェ。……A……お前の強さを……おれに教えてくれ……!!!」

『さっきから言ってんだろ。おれは弟子はとらねェし、師匠の腕を折るような弟子は論外だ』

「悪かったよ……ォ!! だが……信じてはねェ……からな」

　裏切ってみろ……斬るからな……!!!!

『あァ、そのときは大人しく斬られてやるよ』

　ハハッとAが冗談交じりに笑ったそのとき、ビビの声が船中に響いた。

「みんな来て!!! 大変っ!!! ナミさんが……!!!」

『何があった』

「ナミさんがひどい熱を……!!!!」

　駆けつけたAが目にしたのは、体中から汗という汗を流しながら苦しそうに呼吸を繰り返すナミの姿だった。