“嘘つき”は神に祈る Ⅲ (ページ22)

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誇り高き戦士vs鬼畜野郎ページ22

盾と剣。
　それも通常の何十倍何百倍の大きさを誇る武器を手にする巨人と、切れ味も悪く刃こぼれもしまくって虫に食われた服のようになっているナイフを握るチビな人間。
　二人が対峙する姿は、まさに映画のワンシーンだ。

「貴様ラ…よクも……!!!! ｺﾞﾌﾞｯ」

　血走った眼は、Aを気迫で包み込む。
　冷や汗をかきまくり、喉が裂け、吐血を繰り返すドリーの体は戦士とは言いがたい。意識を保つことでさえ困難な状態でも剣を握る彼は、目の前の敵を仕留めることを考えていた。

「小癪なマネをォ!!!!」

『っ……』

　振り下ろされた剣はAを叩きつけることなく地面をえぐり、土埃をあげる。
　いつもであれば軽いはずの剣は、まるで鉛で作られているかのように重く、ドリーの体に負担をかける。歯を食いしばるドリーの口から血が溢れたのを合図に、Aは振り上げる素振りの見られない剣を足場に駆け出した。

『あぶねっ』

　構えたナイフを振り下ろしたAは、盾によって地面へ打ち付けられる。
　覇気でカバーした体は見事な着地を決めたが、衝撃に耐えられなかったナイフはボロボロと土の肥やしになった。

『さすが巨人、デカさも威力も半端ねェ』

「……」

『あんたがゾウならおれは蟻か。まァ、死にそうながらゾウと健康的な蟻だがね』

「！」

　肩で息を整えたドリーに向かってAは走る。
　砕け落ちたナイフを踏み砕いて愛着の沸いた武器を捨てたAは、指を握りドリーに向かって飛び上がった。

　チーターだろうがマグロだろうが簡単には追いつけない瞬間的な速さに、ドリーは目を見開いた。一呼吸置く暇など与えさせないAは、武装色をまとった拳でドリーの腹へと突進を決め込む。

『歯ァ食いしばれ、ノッポジジイ』

「ッツ!!?」

　ドゥン!!! と腹部に浴びせられた衝撃は、勢いも相まってドリーの体重を後転させた。
　「腹から爆発した」と自ら発言していたA。彼は、最も負傷している傷口に塩を塗りたくったのだ。それはもう痛いというレベルではない。鬼畜の所業に、ビビは口を開けたまま唖然とした表現を浮かべた。

「ｶｯ……ハッ……!!! 貴様……強いな…………!! あなどった……!!!」

　力を振り絞ったドリーは、膝から崩れ落ちた。

「Aさん……!!!」

『どうだビビ、映画とは違うだろ』

　巨人と人間の戦いは、苦戦も死闘もなく決着を告げた。