１ ページ2
「A、行ってくるわ」
「うん、いってらっしゃいお姉ちゃん」
王国の出口で大きく手を振れば、お姉ちゃんは今日も見回りに行った。私の自慢のお姉ちゃんは、魔物が他の村を襲っていないかを確認するために毎日毎日朝早くから近辺の村の見回りをする。
私は他の人のために頑張れるお姉ちゃんが大好きだ。毎日偉いなぁって思う。私も奇跡が使えたら、お姉ちゃんのお手伝いが出来たのになぁ。
そんなことを考えながら教会に戻る。既にそこには枢機卿が祈りをしていて、私もその隣に跪いて聖櫃にお祈りをする。
お姉ちゃんが怪我しませんように。お姉ちゃんが悲しむことが起きませんように。
お姉ちゃんが、無事に帰ってきますように。
ぎゅ、と手を握りながら、そうお祈りする。お祈りが終われば立ち上がり、掃除をしようとすると、枢機卿様から声を掛けられた。
「A」
「は、はい！」
「オプロイテは今日も見回りですか？」
「はい。お姉ちゃんに用事ですか？」
「いえ、そういう訳では…。いつも一人で偉いですね」
そう言って枢機卿様は私の頭を撫でてくれる。手袋越しで、体温は特に感じなかったけれどその優しそうな笑みに嬉しくなった。
「…もう、枢機卿様！私は頭を撫でられて喜ぶ子どもじゃないんですよ」
「ついこの間まではオプロイテがいなければ泣いて喚いていたくらい幼かったのに……。一体いつの間に……」
「そ、そんな昔の話しないでください……」
思い出話をするようにそう言う枢機卿様に恥ずかしくなる。顔が熱い。枢機卿様は幼い頃の私を知っている。小さい頃からお姉ちゃんと一緒に教会に来たから当たり前だろうけど、それでも今もまだ幼い子を相手するような枢機卿様は意地悪だ。
「私も早く奇跡が使えるようにならないかなぁ」
そう呟くが、聖櫃様はうんともすんとも言ってくれなかった。よし、今日もお掃除しよ！そう思って掃除道具を取りに行った。だから、枢機卿様のお言葉は聞こえなかったのだ。
「Aはいつまでも奇跡を使えないままで良いんですけどね……」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 140人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
わらび餅(プロフ) - 異d!が大好きで今回、ランドルせさんの作品が異d!で凄い嬉しかったです！更新、応援してます！ (2021年1月26日 15時) (
レス) id: 388ad0ca6a (このIDを非表示/違反報告)
ランドルせ(プロフ) - 皆様コメントありがとうございます！忙しい中大変励みになりました。個別にお返事するには溜まりすぎてしまったので個別でお返事はしませんが、これから頂いたコメントにはお返事させていただきます。何度でもコメントして大丈夫です！これからもよろしくお願いします！ (2021年1月26日 1時) (レス) id: 1e4b41ea08 (このIDを非表示/違反報告)
晴 - お姉ちゃん愛がすごいうちの妹もこれぐらい...無理だな(諦め) (2021年1月24日 3時) (レス) id: 47b2bcc73d (このIDを非表示/違反報告)
花金鳳花 - 異d!の作品は少ないので嬉しいです!更新頑張って下さい。 (2021年1月23日 12時) (レス) id: 05eca00b68 (このIDを非表示/違反報告)
白玉色の赤えのぐ - 更新頑張って下さい！ (2021年1月22日 16時) (レス) id: 199b62a433 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ランドルせ
| 作成日時：2021年1月18日 19時
