【wrwrd】奇跡は使えない (ページ9)

今日:16 hit、昨日:10 hit、合計:22,198 hit

８ページ9

お姉ちゃんと枢機卿は昼過ぎくらいに戻ってきて、そして数人の騎士とロボロさんを連れて各村へ食糧を届けに出てしまった。どうやらコネシマ王に交渉して、農民の人たちに食糧を分け与えるように言ったらしい。そして、それはすぐに実行されたのだ。

お姉ちゃんはその後、砦の様子を見に行くとも言っていたので、恐らく帰ってくるのはもっと後だろう。その間私は子どもに絵本を読んであげたりしていたら、突然扉が大きく開かれ、男の人が来た。

「た、助けてくれ！魔物が、魔物の群れが襲ってきた！」

その言葉に教会にいた騎士達は慌てて外に出て行く。私はその男の人を中へと入れ、戦えない子どもや女性をひとつの場所に集めた。怖がっている表情をしているみんなを安心させるように笑みを浮かべる。

「大丈夫、教会はそう簡単に崩れません。神が皆さんをお守りしてくれます」

そう言えば何人かは安心したように表情を緩める。それを見て私は、教会の扉をほんの少し開けて外の様子を覗き見る。兵士たちが魔物に襲われて倒れるのを救助しに行く騎士や、襲われている人たちを見て不安に感じる。お姉ちゃんは、大丈夫だろうか。
そのまま扉を閉めようとしたその瞬間、遠くから声が聞こえた。もう一度扉を開いてみれば、お姉ちゃん達が見たことの無い魔物に追いかけられながらこちらに走ってきている。
私は大慌てで扉を開き、お姉ちゃん達が入りやすいように扉から離れた。
数人の騎士や兵士たちが一緒に入ってきて、扉を閉めた。

「お姉ちゃん、大丈夫なの？さっきのは……」
「A、いい子だから避難してきた人達と一緒にいて。あと、鬱先生も連れて行って。邪魔」

見た事のない魔物を目にして思わずお姉ちゃんに問いかけるものの、未だ警戒しているお姉ちゃんが有無を言わさないままそう言うものだから、私はそれに従う。鬱先生が隣にいるのは少し嫌だったけれど、怖がっている表情を見て放っておくという選択肢はお姉ちゃんの中にないんだと思った。

扉は外側から大きく叩かれ、今にも壊れてしまいそうで。そう思った瞬間ステンドグラスが大きな音をたてて割れ、さっきの黒い魔物が中に侵入してきた。
騎士たちが慌てて剣をかまえ、そして。

「こっちよ！」

聞き覚えのない声が、響いた。