【wrwrd】奇跡は使えない (ページ26)

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最終話ページ26

巨大な魔物は足早にこちらへと向かってきていて、残っていた数十人の王国民も駆け足で橋を渡る。橋を渡っていないのは王国兵たちとコネシマ王、鬱先生、ロボロさん。コネシマ王は王国兵達に橋を渡るように指示した。何やら策があるらしい。私はお姉ちゃんに駆け寄り、二人で橋を見守る。

ああでも、私はわかってしまった。コネシマ王のあの顔は、見たことがある。何度も何度も目にしてきた、自己犠牲も厭わないと言う顔だ。彼は、コネシマ王は自分を犠牲にして、私たちを逃がそうとしている。

「だめ……っ！」

お姉ちゃんの声が小さく聞こえ、それと同時に橋の上で何かが爆発した。閃光と煙、そして耳に響く音が全て無くなった後に見えた光景は、橋が無くなりその上にいた三人の姿もなく、こちら側へ向かってきていた魔物もこちら側に渡れなくなっている姿で。

「どうして……、命は全て平等で、大切な物なのに、どうして誰も大切にしないの！？」

お姉ちゃんの悲痛な叫びが聞こえる。私はお姉ちゃんを抱き締めて、背中をさすった。さっきまで話をしていたのに、その人たちがいなくなったという事実は、私の中でまだ処理し切れていなかった。

「……私と付き合いたいって言ってたのに」

ふと、そんな約束を思い出した。約束は果たされていたのに、彼が出した条件を結局私は果たすことが出来なかった。

「えっAも？」
「……えっ、お姉ちゃんも？」
「……あの男やっぱり最低ね……！」

いつものお姉ちゃんが少し戻ってきて、ふ、と笑いが漏れた。王国兵の偉い人が、西に向かうように全員を諭す。ゆっくりと、しかししっかりとした足取りで王国民たちが歩き出したのを見て、私もお姉ちゃんも歩き出した。

「でもね、お姉ちゃんのことも国民のことも助けてくれたし……、臭いさえどうにかしてくれるなら少しの間付き合うくらい別に良いかなって私は思うよ」
「……それは、そうね」

その約束が果たされることはない。

…………と思っていたのだけれど。またいつか、彼と再開することがあるとは、誰も想定していなかったのだ。