【wrwrd】奇跡は使えない (ページ25)

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コネシマ王が西へ向かえと言ったのはすぐに周知され、王国兵が先導した状態で王国民がゾロゾロと集まった。橋まで着いて、もうすぐだ、と全員が思ったその気持ちはすぐに打ち消される。
橋の上には黒い魔物が大量に浮遊していて、それを倒すには全員力が足りなかったのだ。

騎士の人たちは、お姉ちゃんでも太刀打ちできない黒い魔物に恐れ戦き、空中を飛んでいるせいで王国兵たちも手出しができない。しかし後ろへ戻ることも出来ず、立ち往生するかと思われたその時だ。ずっと手を握られていたロボロさんの手が離れ、大きな声で、化学兵器を使うことを宣言したのだ。

口々に批判の声があがるが、鬱先生の助力もあって、"全て廃棄するために全て使用済みにする"という作戦が実行された。大砲を充填するための待ち時間は騎士たちが王国民に手出しを出来ないよう魔力を使って誘導し、撃ち漏らした黒い魔物は鬱先生が仲間にすることで対応した。私は、フラフラになりながらも立ち上がるお姉ちゃんを支えて、黒い魔物がいなくなった橋を渡る。

「A、私はここで全員を誘導するわ。貴方は向こう側で誘導して」
「……うん、わかった」

私は一人橋を逆走する。少なくとも橋の向こう側には魔物はいないし、あっちの方が安全だと思う。そして、お姉ちゃんが私を信用してくれているということがわかって少し嬉しくて。私はロボロさんと一緒に誘導をした。
人の流れは簡単に動いて、他の人間も誘導を始めているからこそ魔物が来ないかどうか見張るだけで済んでいたのだけれど。

「……あの、Aちゃん、さっきはごめん」
「え、何がですか？」
「その、断りもないのにずっと手を握っちゃって……」
「……あぁ！いえいえ、気にしてませんよ。手を握ってもらわなかったら、私だけだったらきっと走れなかったのでちょうど良いです」

人が徐々にいなくなって、ほとんどが橋の向こう側に渡った頃、ロボロさんがそう謝罪してくれた。ほんの少し顔が赤いところを見るとどうやら私以上に照れているらしい。いつの間にかいたコネシマ王と鬱先生に揶揄われるロボロさんを見ながら、残りも少ない人達と一緒に橋を渡ろうとした、その時だった。

「魔物だ！王国を突破しやがったんだ……！」

そんな絶望の声が、響いた。