【wrwrd】奇跡は使えない (ページ20)

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お姉ちゃんが倒れた数時間後、窓から見える街は各地で煙が上がって行って、議員たちが慌ただしく動揺している。騒がしくて、お姉ちゃんが起きてしまうほどに。

「……指示を、出さなきゃ」
「駄目だよお姉ちゃん、ちゃんと寝なきゃ！」
「私が失敗したせいで、こうなってるんでしょう？」
「違うお姉ちゃんのせいなんかじゃない！」
「A」

わかって、と呟いたお姉ちゃん。こうして無力な気持ちに襲われて、ああやっぱり私じゃ無理なんだと思った。私は政治のことも神様のこともわからない。口を出しても、結局は居ない扱いされてしまう。
私はお姉ちゃんに背を向けた。

「今から教会の様子を見に行ってくる。……帰ってきた時にベッドに居なかったら怒るよ」
「……ありがとうA」

私は知らないフリをした。お姉ちゃんと喧嘩したい訳じゃない。お姉ちゃんのために動きたい。お姉ちゃんがそれで幸せなら。……ああでも、少し寂しい。お姉ちゃんの身を削ってでも人を助ける心っていうのは素敵だと思うけれど、でもその中にお姉ちゃんが入っていないっていうのは、いやだ。

「……鬱先生」

彼ならきっとお姉ちゃんを守ってくれる。騎士の人達より、王国兵より強いお姉ちゃんを守れるのは、魔物を操るという力を持っているあの人だけだ。
彼を探さなきゃいけない。でも、その前に教会に行こう。お姉ちゃんに嘘をつくことになっちゃう。

そう思って、教会まで走った。

「あれ、Aちゃん」

教会に鬱先生がいるとは、思わなかったけれど