【wrwrd】奇跡は使えない (ページ16)

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「コネシマ王」
「おぉ、今日も来たんか！」

議員になった人達は今日も会議をしていて、お姉ちゃんもその話し合いに参加していたり教会で聖櫃を守ったりしていた。私はと言うと、お姉ちゃんがいない間に教会にいたり、コネシマ王の元へ行って話を聞いたりしていた。
二日目からは普通に話をするようになり、今となっては顔を出すだけで笑顔を浮かべるようになった。

「今日もお話をしてください。口に出すことで軽くなる罪もありますから」
「いや、今日はお前の話聞かせて欲しいねんけど」
「……私の？」
「もう話すことないねん」

突然そう言われても困る。少し悩みながら口を開いた。

「……私、奇跡を使えないんですよ」
「知っとる。だからそうやってシスターやってんねやろ？」
「はい。教会の人間の中で唯一福音を聞いていないから……、だと思うんですけど」
「大体その福音ってほんまに聖櫃から聞こえんのか？聞いたやつおんの？」
「騎士の人達は福音を聞いて奇跡を使えるようになるんです。お姉ちゃんもそうなので」
「お姉ちゃん？」
「あ、ええと、オプロイテです。炎の騎士の」
「……はぁ！？全然似てへんやんけ！」
「よく言われます」

しげしげと物珍しそうに私を見つめるコネシマ王。そうやって見つめられると少し恥ずかしくてはにかんで見せれば、コネシマ王がぼそりと呟いた。

「……シスターもええな。隠されてるのがなんか……クるわ」
「え？」
「国王」

意味がわからなくて首を傾げたのと同時に、見張りの兵士がコネシマ王を咎める声。すまんすまんと口ばかりの謝罪をし、そして言った。

「そういえば悩みあったわ」
「やっぱりあるんですね！教えてください。神に悩みを伝えることで、悩みは解消されやすいですから」
「息子が小さいねんけど」
「国王！」
「……息子……？」

コネシマ王に息子なんて居ただろうかと頭を巡らせるが、そんな話聞いたことは無くて、兵士が怒って声を上げているのを聞くとロクなことじゃないんだろうと思う。

「だからシスターに大きくしてもらいたいなって……」
「A様、今日はお帰りください」

コネシマ王の言葉を遮るように兵士が私を無理矢理立たせ、部屋を追い出した。後ろから大声で笑うコネシマ王の声が聞こえて、私は何がなんだかわからないまま教会に戻ることになった。